クライベイビーのイメソン小説 姉から厄介な頼み事をされた。
その内容は「彼氏のフリをして欲しい」というかなり面倒くさそうなものだった。僕にとっては、高校生になって初めての夏であり、出来ることなら平穏に過ごしたい。妙なことに巻き込まれるの避けたかった。
「なんで僕が?」
「だって、ナオト以外に頼める人がいないんだもん」
姉の橘日向は、現在高校2年生で共学の高校に通っている。昔から何かとモテるし、友人も多い。その姉が頼めば彼氏のフリをしてくれる人間はたくさんいるはずで、僕じゃなくてもいいだろうと訴えたが姉は首を横に振った。
「友達に迷惑かけたくないの」
「弟なら迷惑かけてもいいんだ?」
「そんな言い方しないでよ。ねー、お願いナオト」
色素の薄い柔らかな前髪の下から、上目遣いで僕を見てくる。大きな目に長い睫毛。姉の容姿は弟から見ても可愛いという形容詞がぴったりで、モテるのも理解できる。その外見のせいで通学中によく面倒事に巻き込まれることも知っていた。
8461