要先生は変わらない8回目
静かな空気に包まれて校舎の外通路に立っていた。冷えた風が吹いているのに、頬がやたらと熱くて心臓が忙しなく動いている。もう何度もこの場に立っているのに、この瞬間、いつだって桐島の心は期待で満ちていた。
けれど本当は分かっている。彼は桐島の期待を裏切り、返事はきっと変わらないことを。
「…ごめんね桐島くん、君の気持ちには応えられないよ」
これで8回目の彼との別れ。困った子どもを見るかのように小さく笑った彼は一文字一句変わらぬ言葉を最後に、校門の外へと去っていった。
彼がやってきた1ヶ月前までは青々としていた針葉樹は所々葉が剥がれ落ちて地面を散らかしている。風景はこんなにも短期間で移り変わっていくのに、何も変わらない彼に虚しさを覚えながら目を閉じた。
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