繰り糸の先「癖になった…!責任とれクソバカ…!」って言ってお部屋に来たから「やっぱりか…すまんなぁ」てなるフライ。
シルバーが自分のこと嫌いなのは知ってるし、手早くすませてやろうと思って寝床腰掛けて隣りぽふぽふ叩いて「もちろん責任は取ろう。おいで。」て言うんだけど、最初の威勢はどこに行ったのかと思うくらい黙ったままぎこちなく隣りに来るシルバー。もう既に涙目。
まぁ嫌なヤツとしなきゃならないわけだしなぁ、とちょっと可哀想に思いながら、口を吸ってやろうと頬を鰭で撫でて、シルバーがぎゅ、っと目を瞑ったところでハタ、と「そういえばコイツ口吸うだけで放精までしてたか。ズボン履かせたままだと汚してしまうな」と思って、
「ズボン先に脱がすな?」って声かけたら寝床全体揺れるくらいビクゥッてするシルバー。
「…シルバー?」
「…のか…?」
「ん?なんだ?」
「…挿れる、のか…?」
めちゃくちゃに怯えた目で震えながら聞いてくるシルバー
「…お前がしたいならそうするが、お前が嫌ならしない。」
「…い、いや、だ…。」
「分かった。他に嫌なことがあれば言ってくれ。
お前を虐めたいわけでも、辱めたいわけでもない。」
「…ん…。」
ぎこちなくだけどさっきよりはマシな顔色で頷くシルバー。
「よし。じゃあさっきの話に戻るが、ズボンはどうする?汚してしまうと思うから、恥ずかしければ下にシーツ巻くか?」
「お前の、シーツが、汚れるが…」
「後で洗えば済むだけだ。気にしなくていい。」
「じゃあ、そうする…」
ならコレ使えって新しいシーツ渡すフライ。
「後ろ向いておく。巻けたら言ってくれ。」
「わ、分かった…」
しばらくして「出来たぞ」って声かけられて振り返るフライ。
「掛けただけか?後で落ちそうだな、後ろ、結んでやろうか?」
「…頼む。」
コイツがこういうことを雑にするの珍しいな、まあ後ろで結ぶの難しいしなとか思って結んであげてなんとなく目をやるとシルバーの鰭がまだ震えてて(なるほど、結べなかったか…)って思うフライ。
「ほら、出来たぞ。」
声を掛けて背中をさすってやるとちょっとビクッとして「あ、ああ。」って頷くシルバー。
隣に座り直したフライをちらと見て、
「…寝れば、いいか…?」
「したいようにするといい。お前の居心地が良いようにしてくれ。」
「…居心地なんか、どうやっても悪い…」
「そうか…。」
お前さえいいなら、この前と同じくらい甘やかしてやりたいがなぁって言って鰭で頬をさすってやるフライ。
「あ、あれを、甘やかすっていうのは、悪趣味極まりないな…!」
ぎっと涙目で睨むからおや、と首をひねるフライ。
「もしかして、後半あまり覚えてないか?」
「こ、後半…?」
「口吸いをお前が欲しがった後から。」
あれ確か六回目だったろう?と言ってやると、あ…う…と顔を赤くして何も言えなくなるシルバー。
「…自分でねだったのも覚えてないか?」
「お、覚えて、る、が…」
何かの、間違いだと、思いたかった…と消え入るような声で、鰭で顔を覆うシルバー。
「…シルバー。」
穏やかに声を掛けるとびく、として鰭の向こうからこちらを恐々と見るシルバー。
「その通りだ。あれは間違いで、事故だよ。だからこれはその事故の後処理だ。」
「な、に…?」
言いたいことが分からないと混乱している様子のシルバーにゆっくり話し掛けるフライ。
「俺がこういったことが苦手なばかりにお前1匹に負担を強いてしまった。そのせいで、あの部屋からは出られたがお前が問題を抱えることになった。だから、これは俺の責任だ。その責任を取らせて欲しいと、そういう話なんだよ、シルバー。」
分かってもらえるか?と鰭を差し出すとなんとか言われたことを咀嚼しようと顔を顰めながら鰭を睨んで首を振るシルバー。
「…別に、全部がお前のせいじゃない。技術部のせいも、ある…。」
「ふふ、違いないな。それでも技術部と俺の五分五分で、お前が引け目を感じる必要はない。…もう少し、突っ込んだ言い方をしようか。お前のことを、淫乱だなどとは思っていないよ。」
ビクッと身を固くするシルバー。
「アレ、相当辛かったろう?お前はそれに適応したに過ぎないんだ。ああ、すまない、順番が違ったな。」
「じゅん、ばん…?」
フライが一度立ち上がるとシルバーの腰掛けた傍らに屈んで鰭を額にあてる。許しを乞う姿勢をして。
「な、なに…」
「すまなかった、シルバー。あの場では随分とお前に無理を強いた。そうせざるを得なかったとはいえ、許してくれとは言わない。ただ、お前が良いと言ってくれるなら、責任を持って俺が創った傷を満たそう。」
どうだろうか?と問うフライ。
「…隊長格が、そう簡単に、頭を下げるな…」
「簡単なことじゃないさ。実際、あのまま出られないとどうなるかなんて、考えたくもない。」
技術部は本部直属だ。上が考えることは俺たちには分からんからな。と言うフライにまぁそれは、と頷くシルバー。
「お前には大きな借りが出来てしまった。俺はそう思っている。弱みを握った、などとは思っていない。」
「…それでも、お前はいつだって俺を脅せるだろ。」
それを聞いてふふ、と楽しそうに笑うフライ。
「なあ、シルバー。いいことを教えてやろうか?心を掌握する方法だ。」
隊長として、知っておきたいだろう?
「え、いや…、それは、誰もが知りたいだろうよ…」
「実際、とても簡単だ。小手先の方法は数あれど、基本は『コイツは俺が支配している』と思わせる。それだけだ。それだけで、傍を離れることすら叶わなくなる。」
な、簡単だろう?そういって微笑むフライ。
「…つまり、優位と思っている方こそが、支配されている方だと?」
「その通りだ。今話した通り、俺はそれを知っている。脅しのネタを腹に抱える方が不利だとな。この件でお前に申し訳なく思っているのは事実だが、この負債を少しでも軽くしたいのも利害の面として嘘ではない。」
「…それなら、信用は、できる、な…」
利害として一致するなら、と頷くシルバー。
「いい取引が出来て嬉しいよ、シルバー。隊長としても、友としてもな。」
「…友と言うにはゾッとしない関係だ。」
「そう言うな。お互いを大切に扱わざるを得ないんだ。さ、どうして欲しい、シルバー?」
俺は出来うる限りお前に尽くそう。そういうと、さっきは握らなかった鰭を微かに握り返すシルバー。
「……優しく、が、いい…」
「了解した。」
もう勘弁してくれと言うまで甘やかしてやる。
そうフライが耳元で囁いてやると観念したように、もしくは甘えるようにシルバーはフライに身を寄せた。