手段にこだわってる場合じゃない 赤の隊編纂者カーニャ曰く、釣りとは自然との対話であり、己との対話であるという。
結果に囚われてはいけない。釣り糸を垂らし、ただひたすらに無心で水面を見つめる。張り詰めた糸のように緊張感と集中力を高める。
そう、これはある種の精神統一なのである。
──とはいえ、やっぱり釣れなさすぎじゃないのか、これ。
ぼんやりと考えながら、ロイドは少し遠い目を浮かべて己の持つ釣り竿、その先に垂らされた糸を見る。釣り場にぷかり、と浮かんだルアーは微動だにせず、さらにいえばその周囲に魚影などひとつも見つからない。
さっきまでそこに何匹かいただろう、と内心でぼやくものの、それに応えてくれる魚がいるわけもない。思わずため息も漏れるというものだ。
1886