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    okm_tmsb

    @okm_tmsb

    自探索者長編やif話はエブリスタにてhttps://estar.jp/users/61829929

    短編とセッションバレorシナリオバレのあるものを
    ポイピクにて取り扱っています。

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    okm_tmsb

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    海川文弥
    通過シナリオバレ等なし。
    探偵業してる彼の様子が書きたかった。

    猫の家お依頼の内容は、“とある猫を探して欲しい”という物だった。
    よくある話だが、簡単に言えば猫探し。
    これは僕が助手を引き抜く前の話で、まだまだ人脈も依頼も浅い頃のこと。
    小さな女の子が、「この子」と片手に持ってきたのは、ネコの絵だった。
    これは難しいと思いつつも詳しく聞くと、どうやらそれは普通の猫探しとは違う様で、なるほどと納得せざる終えなかった。

    「多分、死んじゃったんだなぁ。」

    もちろんそんな事を、必死に探偵にまで頼みに来た子供に言えるはずもなく、しかし、引き受けないとは言えず、日を跨いでいた。
    僕が何で、探しネコが死んでいると断言したのかと言うと、その依頼人はお母さんに『飼い猫は天国に行ったのよ』と言われたと話したからだ。

    依頼人の子供には、天国の理解はまだ速いのか。いや、速いだろう。
    しかし、そのネコの代わりなどいる訳もなく、ならばどうしてあげるのが正解だろうか。

    「それしか、ないかなぁ、、」

    僕は、この難易度の高い依頼に応える術を一つしか持ってなかった。

    後日、僕が訪れたのは少女の自宅だった。
    ご両親は不安げにしていたが、「もちろんお子さんと二人きりでお話ししようだなんて思ってませんよ。」と伝え、リビングで少女に詳細な事を伝える形になった。

    少女の表情は芳しくない。
    もちろん両親に説明もせず猫探しを頼んだことも含めて、僕が準備をする間に諸々叱られたのだろう。
    もしかしたら、猫が“死んだ”という事を理解したのかも知れない。
    それでも、僕は依頼人からの依頼を遂行するのが仕事だった。

    口を開いて、説明したのは、本当に初歩的な事だ。

    「まず、ご依頼にあった猫さんはこちらで間違いないですか?」
    「!っ!!!はい!」

    両親も驚いて覗き込みにくる。
    それは間違いなく依頼人宅の猫だろう。
    なぜ?とさらに訝しげにする両親にもむけて、「依頼を受ける数日前の、駅前のデパートの防犯カメラの映像です。」と伝える。

    猫には大体、猫なりのルートがある。
    決まった道、お気に入りの場所、そういう所をしらみつぶしに探して、この写真は見つけた。
    少女は、依頼より前の写真と聞いて少し悲しげだが、それでも初めて知ることだったのか決して泣きはしなかった。

    「猫さんはどうやら決まった時間に、決まった場所にお散歩に行かれていた様ですね。
    そこに、えっと、うーん、恋人が居たみたいです。」
    「「「えっ」」」

    両親と少女の声がダブる。知らなかったかぁ〜。
    追加で、特定の猫と戯れる写真を机上に数枚並べる。

    「良い反応ですねぇ〜。
    あっ、依頼人さん曰く、猫さんは突然いなくなってしまったとの事でしたが、
    男の子。でしたよね?」
    「はい!」

    元気の良い返事だった。
    両親は少し動揺しているが、最初の不信感はどこへやら、すっかり僕の話を聞き入っている。
    と、そのタイミングでピンポーンとチャイムがなる。奥さんがパタパタと迎えに出れば、僕も一度腰を上げる。
    「あっ、お二人もこちらへ。」とお父さんと少女を玄関へと案内すると、そこでは奥さんと一人の女性が話をしていた。
    女性は名刺を出して名乗る。地域猫の保護活動のボランティアをしていると。

    僕はすかさず少女に伝えた。

    「君の探していた猫さんはね。
    どうやらもう、数ヶ月前にお父さんになってたみたい。
    探してる猫さんは見つけられなかったけど、猫さんの家族さん達は見つけましたよ。」

    それを聞いて、少女はパタパタと玄関の向こうへ走っていく、奥さんが心配してついていくと、ボランティアの女性もその後を追う。

    僕もついていこうとしたが、旦那さんに声をかけられた。
    「本当なんですか?」と、疑いたい気持ちはわかるが、頷いて見せた。

    「お子さんが預からせて下さった手書きの猫さんのイラストに、毛が付いてまして、
    伝手に調べて貰ったら猫の毛で間違いないというもんですから。
    ここらは野良も多いし、もしかしたらと思って、地域猫の保護活動団体にお願いして似てる猫を探したんです。
    そしたら、その猫ではないだろうけどって、紹介されて、こっちの勝手ですが、その猫達と猫さんの血縁関係を調べたら、まぁ、一致しまして。」

    まさかここまで行き着くと思わなかった僕は、少し大それた事をしてしまったかと頭を掻くが、旦那さんはひどく喜んで、財布を出すと僕の手にお札を握らせた。
    しかし、僕はそのお札を返した。

    「探すべき猫さんは見つけられなかったですから。
    あっ、知ってますよ。亡くなってらっしゃるんでしょう?
    なおさらですよ、受け取れません!
    僕も、プロの探偵ですから。」

    旦那さんはグッと息を呑んで頭を下げて礼を言った。
    僕は困ったと思いつつもその礼は受け取って玄関を見る。
    泣いて喜ぶ少女から慣れた匂いがまだ残るのか、親猫も子猫も警戒薄く少女に寄っていく。

    いつか、少女が天国を理解した時に、きっとこのもう一つの家族がそばに居る事が強い励みになるのではないか、
    そうであってほしいと、切に願うばかりだった。
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