人を呪わば俺はよく、無理をするなと言われる。
自分ではあまり無理をしてるとは思わないが、気づいたらソファに運ばれていたりは良くある。
同期曰く、周りに無理するなと言われてるということは、無理をしてるって事だと思てと言われた。
まぁ、それはそうなんだが、自覚がないのが一番問題では?と理解はしている。
そう言うと、大概信用のない眼で見られる。
「直紀はさぁ〜、なう、が無理してるとは思わないの?」
「なう?」
「いま。」
「言葉の意味はわかる。というか、今が無理をしてるだとすれば、俺は怖がってるって言いたいのか元凶。」
「ひやぁ〜直紀が、俺っ子タイムだぁ!」
「ちょっと黙ってろ。」
大体、俺はいつも一人称俺だ。
仕事の時に僕にしてるだけで、、、
いや、そんなことはどうでもいい。
コイツの言ってる“なう”は、おもっていよりもずっとやばいからだ。
当たり前のように休日返上して、桜川祈の提案につきあい、ホラースポットを巡っている訳だが、
とある廃村の一角で、所謂霊障にあってるのが、“なう”だ。
やっとのこと見つけた安全そうな蔵の中で、そっと壊れた戸から外を覗き込めば、
蝋燭を鉢巻で頭に巻きつけた、いかにもな様子の黒長髪の白い服の女性がウロウロと歩いている。
その手には釘と槌。まぁつまり、そーゆーことだ。
「呪いは返ってくるからねぇ〜。
我らに見られて焦ってるかなぁ?」
「これは霊障というよりも、ガチでやばい方のやつだ。」
「そだねー。」
まぁ、霊より何より怖いのは人だ。
人を呪わば穴二つ。
昔から良く言い伝えられてきた、割と当たり前の常識と思うのだが、しかし、呪う気持ちも分からない訳でないからタチが悪い。
フラフラと歩き回るそいつは、どうやら自分達を見つけるまでその場を去るつもりはないらしく、しかし、この辺りに居ると確信を持っているらしい。
どうするとは問わない。もうどうするかなんて、このイカレタ作家の中では決まっているだろう。
「んじゃ、直紀はこれを持って叫んでね。」
「はぁ、、、、わかった。」
「‥‥我が言うのもアレだけど、直紀。
そーゆー所だと思うよ?」
「?」
桜川はわざと足音を立てて蔵の急な階段を登っていく。確実に外に響いたであろう木の軋む音に、目的のそいつは猛スピードで倉へと飛び込んできた。
思いの中スピードが速い。しかし、蔵の出入り口は大概10センチ前後の段差がある物で、多少崩れていてもその段差分スピードは落ちる。
その一瞬を狙って、俺は渡されたバケツをひっくり返した。
途端、その中にあった雨水の塊がそいつの頭にあった火を消して長い髪がぺっとりと肌にそって張り付く。
焦ったそいつが釘を落としたのを見て、暗い室内から足を伸ばしてその釘を踏みつける。
単純に拾えないようにしただけだが、近くで見ると相手は女性のうちでも小柄な方だったようで、
俺が「」と喉の奥を締めて声を出すと、小さく怯えた様子を見せた。
それが聞こえたのか、ドンドンと二階から足音がする。
一つじゃない複数の足音。
2階の床がギシギシと歪み埃を落としてくる。
果たしてどうやってこの音響を準備したのか、あぁ、スマホ大音量か。などと、俺が納得する間に、目の前の女性は叫び声を上げて蔵を飛び出していった。
おい、俺の頭の上に乗ったこの埃と木屑はどうしてくれる。
と、とりあえず危機を脱して思いながら払っていれば、桜川はゆっくりゆっくり階段を降りてくる。
「よかったぁ〜怖がりでぇ〜」などと言うが、普通に怖いと思うが?
「はぁ、、そうじゃなくても壊れかけなんだ。
あんなにドタバタしなくてもよかったんじゃないか?」
「ちゃんと加減はしたよ。」
「‥‥まぁ、足音をスマホで出すのは良い案だったな。」
「えっ?我、スマホなんて使ってないよ?」
「あ?」
「え?」
「」