放課後、いつもの部室。周りにはいつものメンバー。慣れたヤツらの前で着替えることに、いまさら抵抗はまったくない。もちろん他のヤツの着替えが気になる、なんてことはあるわけもなく。つまり視線がそこへ向いたのはたまたまだった。Tシャツを脱いだ靖友が、バッグの中のジャージを探している後ろ姿。その背中にうっすら付いている赤い痕。細く長いそれは、猫にでも引っ掻かれたみたいになっている。
転んだにしてはおかしな場所。というか、転んだなら痣や擦り傷のようになるはず。コーナギリギリを攻める靖友が、肩に傷を作っていることはよくある。でもあれはそういう類のものじゃない。もしかして猫に背中から襲われた? にしても片方ならわかるけど、左右に付くって絶対変だ。もしかして本当に誰かに引っ掻かれた? あんなところを。いや、その前に服の上から引っ掻いて見てわかるほどの痕は残らないだろ。なら裸の時? 風呂場で? それこそ誰にだよ。だいたい、あれは後ろから付けられた傷じゃない。こう、抱きつかれて爪を立てられって感じで……。そこまで考えて、昨夜のことが急に思い出された。
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