《白蛍》能ある蛇は自らを隠す「いつまで経ってもキスしてくれないんだよね」
蛍と白朮が恋人と呼ばれる関係になってからどれくらいになるだろう。指折り数えて片手では足りないのに、それほどの時間を共にしてきたにも関わらず二人は一度もキスをしたことがなかった。
それがただののんびりとした恋愛故だったなら悩むこともなかったけれど、何故か白朮が意図的にキスを避けていることが蛍はずっと気がかりだった。
街で仲の良いカップルを見かけたときにはいいなと呟いて横目で催促してみたり、長く見つめ合ったときにはそっと寄りかかってみたり。白朮がそれにふと息を詰まらせた辺り蛍の必死のアピールが伝わらなかったはずもないのに、すべて曖昧に微笑まれてなかったことにされた。
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