《トマ蛍》ねえトーマ、お誕生日おめでとう。愛してるよ ずいぶん長いこと会っていないように感じるのはきっと気のせいではないだろう、決して筆まめでないはずのトーマが五十枚綴りの便箋を使い切ってしまうくらいの時間が経ったのだから。
その分受け取った手紙も少なくない。我慢した寂しさと同じだけの山になった手紙も、離れている間にも二人で共に積み重ねた思い出だとすれば良いものかもしれないと思えた。
彼女が旅人であることは重々承知している。むしろトーマは、あちこちを飛び回るその姿を美しいと思ったのだ。目的に向かって立ち止まることはない、振り返ることもない。一処に留まるなんて似合わないとさえ思う。何もかもわかった上でその手を引っ張った。忙しなく紡がれていく彼女の日々にひとつ自分が刻まれるだけで嬉しかった。
7575