【綾人蛍】この想いは発達途上穏やかな人だと思った。
纏う空気は凪いだ水面のように落ち着いていて、
妹を見る目はどこか懐かしくて。
その目が、今は行方知れずになっている兄の面影に重なる。そばにいると落ち着くけれど、時折心がざわつく。
そんな印象の人。
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神里屋敷前、ヒラヒラと舞う桜の花びらをぼんやりと見上げながら待ち人を待つ。屋敷の方から喧騒が聞こえてきて、やっぱりまだ忙しそうだなぁと溜息を吐いた。
久しぶりにゆっくりお休みが取れたから
どこか遊びに行きたいと頬を赤く染めた綾華に言われたのは数日前。社奉行はここ最近忙しそうにしていたから、折角のお休みなのに連れ歩いていいものかと考えたけれど、本人たっての望みだし、気分転換に外を歩くのも悪くないだろうと了承した。今はその綾華の準備待ちだ。
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