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    クリ想が同棲している話

    #クリ想
    clitoris

    黄色くなる 兄との二人暮らしが恋人との二人暮らしになっても、北村想楽の日常に大きな変化はない。
     家事を分担し、体調不良の際には気遣いながらフォローする暮らしは兄との生活と同じこと。その日は想楽が買い物を任されており、古論クリスからは買い物のリストがLINKメッセージで送られていた。
     よく行くスーパーの棚を巡って、自分とクリスに必要なものを買い物カゴへ入れていく。鮮魚コーナーは覗くが、海鮮のたぐいはクリスがどこからか買ってくることが多いのでスーパーで買うことは少ない。パン類、精肉コーナー、鮮魚コーナーを過ぎた先にある青果コーナーの売り場のほとんどを緑が占めていたが、その中にある黄色いものが目に留まった。 
     買い物カゴを提げた手にはスマートフォンを持っていた。画面を見下ろせばいつも通りレモンの指示がある。売り場にはバラ売りのレモンと袋詰めされたレモンがあったがクリスから一個か一袋かの指示はなく、それでも想楽は迷わず袋詰めされたレモンを手に取った。
     レモンの分だけカゴが重くなる。クリスと暮らしはじめるまでは、レモンが売り場のどこにあるかを正確には知らなかったのに今では迷いなくレモンを手にすることができる。かつての自分では使い切れないほどのレモンをクリスが使い切るたびに、想楽の中にレモンの使い方が増えていく。
     ソテーやパエリアに添える、飲み物に絞る、眠気覚ましに生でかじる。クリスがレモンの使い方を少しずつ教えるから、想楽も外で飲んだジュースにレモンが欲しいと思うことすらあった。
    (こんな風になるなんて、思ってもいなかったけど――)
     今はまだ鮮やかすぎるレモンの色が、いずれは馴染んで褪せていくのかもしれない。
     レジへ向かう最中に、カゴの中でレモンの袋が転がった。
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