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    エビマヨ侍

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    エビマヨ侍

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    アーカーシャと星夢の話
    ⚠拙い文章
    完全二次創作で公式とは違った解釈が含まれます

    伝記の傍観者アーカーシャ


     彼はとある世界の目撃者であり傍観者だった。
    彼が存在し、実際に観てきたその世界は後に「黎明の地」と名を付けられ数多の種族が歴史を紡いでは消えていった。アーカーシャはその黎明の地で人として生きて人として死に、現在は神へと成り上がった。

     傍観者であるアーカーシャは黎明の地で起こった第二次戦争を見届け深くため息をついた。


    「コレがお前の観たかった物語なのか」

    「生きとし生けるもの、皆が皆同じ思想で生きているわけではありません。対立は避けられぬもの、あなたもよくご存じでしょう?」


     アーカーシャは自身の周りを呑気に飛び回る2枚の異なる翼を持つ少女―星夢に問うた。
     不機嫌なアーカーシャに対して彼女はとても喜びに満ちた満足そうな顔でいた。
     彼女はもう一度その物語を見ようとアーカーシャの手に握られた光り輝く伝記に手を伸ばす、が、それをアーカーシャが許さなかった。


    「均衡を保つ、それが世界に必要なことであると私も理解はしている…だが凄惨な結末を迎えると分かっている物語をわざわざ読み返すのは気分が悪い」

    「あなたは本当に平和主義なのですね。そんな調子では今後この世界に何が起こってもあなたが干渉すのは難しいでしょう」


     眉間に寄ったシワを伸ばしながら星夢から取り上げた書物に目をやる。そこには―アリス―と人名が刻まれていた。アーカーシャもよく知る人物、アリス。彼女を混沌へ導いたのは神でも悪魔でもなく彼女と同じ人間であった。
     アーカーシャは先ほど星夢の言った通り平和主義者だ。混沌へ呑まれる世界を観ることを嫌う。ここ数百年のうちに彼もだいぶ耐性がついたが、それでも実際にその現場を五感すべてで感じたことのある彼にとっての過去の話であればまた別だ。
     今ではただの傍観者として誰の物語にも干渉せず眺めているだけの立場のアーカーシャだが、アリスのこの伝記を観ると心の奥底から歴史を改変できないものかと妬んで仕方がなかった。
     この物語の主人公であるアリスが引き起こした第二次戦争は人間であった頃のアーカーシャが実際に耳にしたことのある一つの過去でもあったからだ。
     アリスはかつて彼と対面したことがあった。当時まだ人間で、性別や名前、容姿すら定まっていなかったアーカーシャは既に悪の手に染まったアリスに出会い、酷いトラウマを植え付けられた…ということはない。ただアーカーシャにとって「良い物語の結末」にはならなかっただけだ。
     ただし結末というのは「アリスとアーカーシャの章」における結末であって、アリスの伝記の結末ではない。
     この伝記は未だに新たなページを紡ぐ。この物語の主人公であるアリスが黎明の地に現存しているからだ。彼女が行動を起こせば勝手に物語が刻まれる、この伝記はアーカーシャと星夢とはまた別の傍観者が描いている物語なのだ。


    (この伝記の作者にとっては絵日記のようなものだろうか…まれに動く絵が全ての伝記に現れる、が…どれも私達傍観者にそれを体験させようと引きずり込んでくることが厄介だ)


     アーカーシャと星夢はあくまでも傍観者としてこの時空間にいる。彼らが読み手側として観ているこの伝記は、二人が干渉しようと思えば容易くできる。が、彼らは今この物語の執筆者でも登場人物でもない。これは二次創作ではなく一次創作なのだと星夢はよく口にしている。
     実際、アーカーシャと星夢がアリスとはまた別のとある人物の伝記内に登場していたことがあったが、それはあくまでもその物語の中での二人であり、事細かな描写によって傍観者である二人は全く別の人物であることが分かりきっていた。
     自分達が存在している物語に接触なんてしてみれば、傍観者として存在していたこの体が消滅する恐れもある。アーカーシャと星夢が物語に接触しないで傍観者であり続ける理由は生者が故の死に対する恐怖心や、単なる読者としての役割を果たすため、なのだろう。

     もう一度深くため息をついたアーカーシャはまた別の書物を手に取り、ゆっくりページを開いた。


    「あら、これはまだ新しいですね」
    「ああ。最近書庫に追加されたものだ」
    「それは楽しみです!私たちも登場するかしら?」


     アーカーシャの手元にある伝記には―ライラ―と記されている。
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