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    kanzaki9120

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    白黒兄上の話後日談4
    沢山コーヒーのリアクションが届いて笑うw
    傭兵隊の話

    白黒兄上の話後日談4シュバルツから手紙が届いたと思ったらまさかの魔物を生捕りで持ってきて欲しいとのこと。隊長と2人で何か暗号でも隠されているのかと思うほどに意味不明。

    何故眠気覚ましのあれが飲み物になってるんだ?しかも弟君が御所望…。しかも領地で育てる?魔物を?なるほどわからん。

    まあさして凶暴でもないし、報酬も悪くない。依頼元がシュバルツだから支払いも確実だし問題はない。

    「じゃあ5、6匹捕まえて持って行くか。おい返事出しとけ。酒用意しとけってな。」

    「わかりましたぁ。」

    返信を出して魔物を捕らえに行った。この魔物はあまり凶暴じゃないから基本的には討伐依頼はない。だけどこいつがつける果実は一応食えるからいたらついでに狩っておくくらい。果実は小さい上に果肉は少なくかなり酸っぱいからちょっと摘むくらいはいいけど、腹を満たすほど食うもんでもない。だから種ごとガリガリ食ってたけどこれを食うと眠くならないと気がついてから果実を食った後の種を洗って炒ったやつを持ち歩くようになった。ちょっと炒るだけのつもりが焦がしたやつがいた。元々美味くもないしまあいいかと思ったら焦げてる方がマシな味だったから、飯を作る時に片手間で炒っておくのが定番になっていた。




    「よお!シュバルツ元気にお貴族様やってるか⁉︎」

    「お久しぶりです。とりあえず元気ですよ。」

    久しぶりに下品な男がやってきた。まあ弟が依頼したのだから仕方がないけど…。植物魔物は荷馬車できぃきぃ鳴いていて、なんだか悲壮感に溢れている。

    「こいつらどこに置くんだ?」

    「こっちでお願いします。」

    弟は囲壁の外の小さい雑木林へと連れて行った。小さい雑木林は埒で囲ってあるだけだ。

    「この辺でいいか。」

    魔物の根っこを覆っていた布やロープを外すと、魔物は雑木林のごく浅い位置に根を張り始めた。根を張ってすぐに根っこが鞭のように飛んできたけど、傭兵隊は雑に叩き落としていた。

    「お前これ育てられんの?」

    「責任持って面倒みますよ。」

    犬猫みたいに言ってるけどそれ魔物だからね?

    傭兵隊は弟が借り上げた宿に泊まり、下品な男は一度屋敷にやってきて弟にインク…改めコーヒーを出されていた。

    「どうしてこうなった?」

    「いや口の中に残るなぁって思ってお湯で抽出したのがきっかけですね。」

    「んなもんその辺にぺってすんだよ。」

    「室内ですよ。」

    屋外でもそんな下品な真似しないでくれ。こんな下品な男に育てられて弟はよく染まらなかったな。良かった。チンピラみたいになってなくて…。

    「元々はティーポットに砕いた種を入れて、紅茶みたいに淹れてたんですけど、なぜか弟が改良をしまして最終的にこうなりました。どうぞ。」

    ズズーっとコーヒーを啜る音が響く。お前わざとやってるだろ!前に父上といる時とかは静かに飲んでただろ!なんでわざわざ音を立てるんだよ!

    「あー…うん。なんだ?美味いは美味いが…うーん。」

    「まあ種をそのまま食べている時ほどのインパクトはないですよね。」

    「あと携帯性が悪いし、水は貴重だからなぁ。」

    「ですよね。俺は種齧るよりこっちの方がいいですけど。」

    「で?これが商売になると?」

    「弟の見込みではそうですね。」

    「お前の弟大丈夫か?」

    なんだとこら!…と言いたいところだけど、これについてはお前に同意だよ。これ本当に流行るの?

    「眠気覚ましとしては確かですから、最悪炒った種自体はある程度さばけると思いますけどね。」

    「まあ貴族って美味いかどうかより貴重かどうかとかで喜ぶんだろ?俺たちと感覚が違うからどうなるもんかね。」

    間違ってはないけど別に美味しいかどうかわからないわけじゃないからな!見栄的なものだから!こんな貴重なものを手に入れられるアピールだから!なんか味音痴だと思われてるの腹立つ!

    「そんで?貴族生活はどうよ。」

    「勉強とダンスばっかりですね…。」

    「前から思ってたけど、ダンスってなんの意味があんの?いやまぁ、俺たちだって踊らねぇわけじゃねぇけどさ。」

    「社交の手段の一つで一応は楽しんでやってますね。」

    「楽しい?」

    「いや…うーん。」

    「楽しくなさそうだな。」

    「まあ気楽な生活に慣れると堅苦しいなって思いますよ。ステップとか決まってますから、酔って気ままに踊るのとは違いますし。」

    昔は楽しそうだったのに、やっぱり楽しくないのか…。そっか。

    「勉強はどうよ。」

    「市井で生きるなら要らない分野が割と大変ですね。お陰様で眠気覚ましを導入してこうなりました。」

    「着地点が意味わかんねぇな。」

    「いや俺もこの状況は意味わかってないです。」

    私もだよ。



    ところ変わって傭兵隊の為に借り上げた宿屋に来ていた。

    「今日はシュバルツから差し入れがあるぞ!」

    「ひゅー!」

    「酒か⁉︎」

    「おねぇちゃんはどうした⁉︎」

    弟が差し入れたのはお酒。割と安価なワインだけど、この産地のやつはそれなりに美味しい。差し入れは瓶とかじゃなくて樽。パーティ会場に出すわけでもないしこれでいいんだろう。

    お姉ちゃんはどうしたなんて声は上がっていたけれど、当然女性なんか連れてくるわけもなく来たのはワイン樽と弟だけだ。傭兵隊も弟が女性を連れてくるとはそもそも思っていなかったようで、一応ブーイングは上がったがさらりとしたものだった。

    傭兵隊は浴びるほど飲んで馬鹿騒ぎ。この宿屋はツェアブルクでは下位の方の宿屋だ。最初はもっといいところじゃなくて良いのかなと思ったけれど、これは妥当なチョイスだと思う。騎士団も馬鹿騒ぎはするけど、全裸になる馬鹿はいないし、床で昏倒したままのやつを避ける必要もない。騎士団って結構上品に飲んでたんだな…。

    今回の件はヴェルナー発案だから輸送費とか依頼料とか一泊の宿泊費はヴェルナーから出ているけど、差し入れだのこの馬鹿騒ぎの飲食代は弟から出ている。弟も一応予算が存在しているし、今まで放置してしまったから父上がかなりの金額を渡している。 

    今回のワインくらいならいくらでも買える金額があるけれど、弟は堅実だから騎士団の慰労に使うより安い金額くらいしかかかっていない。

    副隊長とやらはこういう場ではまともな方で、酒こそ凄い飲んでいるけど割と静かに飲んでいる。でも弟に馬鹿みたいに飲ませるのはやめてほしい。べろべろじゃないか。弟は三人掛けのソファーの端に座る副隊長とやらを背もたれに2人分を占領して肘置きに足を乗せている。

    「んふふ…。たのしー。」

    「そうかい。そりゃ良かったな。普段は飲まねぇの?」

    「のまないれすね…。べんきょーしなきゃいけないのれ…。」

    「ふーん。」

    「というかきーてくださいよ。きしだんがぁ…」

    「はいはいはいはい。もうそれ3回目ぇ…。めっちゃ過保護ね。仕方ねぇだろ。昔拐われたのがお前の兄ちゃんで、戻ってきたらお前も同じことするだろ。」

    「30はつけます…。」

    「お前よりマシじゃねぇか。はいこの話終わり。」

    「んえ〜…。」

    弟がうとうとし始めると、弟からグラスを取り上げて背もたれにかけてあった自分の上着を弟にかけた。

    「あつい。いらない。」

    「うるせぇ掛けとけ。てめぇすぐ風邪引くだろうが。」

    「もうこどもじゃないんれすよぉ。」

    「ガキじゃなくなってもひいてただろうが。」

    そんなに?弟は特に病弱とかではなかったと思うけど、やっぱり環境が悪かったのかな?気を使ってもらえてたなら良かったよ。こういうところはこの男を評価している。

    「あれ?そういやこいつ館に返さなくて大丈夫か?」 

    「どうですかね。…だめかも。」

    「いやいやもうガキじゃないんだし…だめか…朝帰りどころかたぶん昼くらいに起きるし…」

    「シュバルツが怒られるだけならいいですけど、俺らまで文句言われませんかこれ。」

    たぶん駄目かな。泊まってくるとか言ってないし。最悪騎士団来ちゃうかも…。

    「しゃーねーなぁ。送り届けるかぁ…。」

    「副隊長頑張って!」

    「なんで俺だよ。お前らで行けよ。」

    「嫌です。貴族の館とか行ったことないし。」

    「そうだそうだぁ。副隊長貴族担当でしょうが。」

    「担当したくてしてるわけじゃねぇんだよなぁ。」

    貴族担当?お前が?…いやまあ、一番マシなのか?

    「シュバルツの上着どこだぁ?」

    「こっちです。」

    眠ったまんまの弟を起き上がらせて、上着を着せて上着を着た副隊長とやらが背負う。

    「はぁーでっかくなったなぁ。どっこいしょ。」

    弟といるとなにかと喧しいこの男は、流石に弟が寝ているからただただ無言で館まで歩いた。館では執事が応対し騎士が男から弟を受け取ろうとした。

    「ん?おい。シュバルツ離せ。おーい。起きろこら。」

    弟が男の上着をがっちりと握り込んでいた。弟の握力であるから無理矢理外そうと思えばたぶん外せるのだろうけど、うっかり怪我などさせたくない騎士と執事はサクッと諦めた。

    「代わりの上着を持って参ります。」

    「いらんいらん。酒も入ってるからな。明日返してくれりゃ良い。」

    そう言って男は戻って行った。



    宿屋に戻ると飲み会もお開きムードだ。まともな思考を保っている奴らが片付けや、行き倒れを部屋にぶち込んでいる。

    「あれ?副隊長上着は?」

    「追い剥ぎに遭った。」

    「副隊長が⁉︎えっ⁉︎そんなやついるんですか!」

    「シュバルツだよ。上着離さねぇのあいつ。」

    「なんだシュバルツか。じゃあいいや。」

    驚いていたくせにシュバルツだと言った瞬間興味を失った団員は、そのまま片付けを再開していた。

    「なんだとはなんだ。俺が風邪ひいたらどうすんだ。」

    「あんた風邪とか罹ったことないでしょうが。もしなったら天変地異の前触れかなって心配です。」

    「天変地異の心配する前に俺の心配をしろよ。」

    確かに風邪をひいたことはないが、天変地異よりは先に俺の心配をすべきじゃないのか?人生初の風邪だぞ?なんもわからないから怖すぎる。シュバルツはよく風邪をひいていたが、あいつが罹った風邪は基本的に誰にもうつらなかった。他の団員が持ち帰った風邪はもれなくシュバルツにうつりそうで、団員全員が戦々恐々としていた。強いやつの風邪は弱いやつにうつるとどうなるのかわからない。シュバルツにうつしたら死ぬのではないかと病人は隔離された。となると俺が風邪をひいたら誰が看病するんだ?隊長か?怖い。隊長はがさつ過ぎるからちょっと遠慮したい。
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