花鳥風月「小次郎は、星も好き?」
「星?」
「うん。月は…好きでしょう?」
木々の揺れる音。暗い空を見上げて寝転がりながら話せば、近くに座っている彼もぽつりぽつりと言葉を紡ぐ。わたしの隣に眠るマシュが起きないように、焚火の燃えるパチパチとした音よりも小さい声で、囁くようにわたし達は言葉を交わす。
「…そうさなぁ…。月だけではなく…星や、それから…肌を撫でる風や、空を自由に飛ぶ鳥」
「…」
「そういう自然のものはどれも美しいと思っているよ」
ふわり。風に舞う小次郎の群青色の髪の毛が視界の端に映って、空を見つめる頭を動かす。木に寄りかかって未だに刀から手を離さない彼をじっと見つめ、ふと振り向いた顔に微笑みかける。
「そう言う心、なんて言うんだったっけ」
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