僕の調べ物をライトさんに手伝ってもらっている
関係で　進捗の報告と今後の方針決めを兼ねて
自宅にお招きした　単に飲み会ともいう
ほら　電話は盗聴されるしメールだって
ハッキングされるじゃない？
口頭がいちばん安全なわけ


「そういやあんた　うちへの依頼は毎回俺指名
だったけど　どこかで評判でも聞いたのか？」

「うふふ　ひとめぼれ♡ ってのは冗談として」

「おい」

「んー　あれかな　目が死んでるのが
気に入ったのかな」

「あまり嬉しくないな…」

「僕と同じものを見た事があるんだなって
死にたいのに死ねない絶望感とか
死にたかったのに生きてる事に安心する矛盾とか」

「だから信用できると思ったんだ」





これは管理局とは関係ない僕個人の事情で
――そうだね　私怨と言ってもいい
かなり危ない橋を渡る羽目になると思うけど
そこは報酬につけるつもりだよ

順番に説明するね　まずとある病気の話をしよう
『エーテル適性減退症候群』て聞いた事ある？
名前の通りエーテルにめちゃくちゃ弱くなる病気
なんだけどさ　生まれつきの疾患で
かかった子供はだいたい成人出来ずに死んでいく
しかも死ぬとエーテリアスに変化するって
オマケまで付いてくる　やばいでしょ？
そして僕もその患者のひとり

お前は成人してるじゃないかって？
たまたま症状が悪化してないだけだよ
で　ここからが本題だよ　エーテル適性減退症候群
の患者の髄液からエーテル適性が爆上がりする薬を
作ろうとしてる悪趣味な奴らがいるんだよ

僕が子供の頃にいた施設が治療の名目で
患者を集めてそういう研究をしててさ
しょっちゅう背骨に針刺されてチューチュー
抜かれてたわけ　ちょ――――痛いの
まさか毎回痛い思いして採取されてる髄液が
悪の組織に利用されてるなんて思わないじゃん
そこで弓の師匠と知り合ったりして
悪い事ばかりではなかったんだけどさ
あいつらの研究はまだ完成してないし続いてる
僕が生きてる間に潰しておきたいんだよ


「……俺は何をすればいい」

「引き受けてくれるって事でいいのかな」

「断ったら生かして帰す気ないだろう」

「やだなぁそんなに殺気出てました？」

「あんたは私怨と言うが　ようは同じ病気の
子供たちを守りたいんだろ
パイセンの好きなヒーローみたいじゃないか」



やばい　動悸がする
全身の血が顔に集まるのを感じる
なに言ってるのこの人　言うに事欠いて
どこの誰がヒーローだって？
英雄ってのは星見課長みたいな――



「……どうした？顔が赤いぞ」

「いや　想定してなかった返事だったから
びっくりして……」

「まあいいさ　これからよろしくな浅羽サン」

「……悠真でいいよ」


それで僕らは共犯者になったってわけ
……なんで同じベッドで寝てるんだろうね？
ど真ん中を占領する１８５ｃｍから
蹴り出されそうになりながら　僕は
二度とこいつは泊めるものかと決心した