今日はビデオ屋に有給を取ったという悠真が
遊びに来ている
店の手伝いをするわけでもなく　棚のビデオを
隅から隅まで物色しているけど　なかなかお眼鏡に
かなう作品がないらしい
長い時間をかけてようやく手に取ったビデオテープは
最近とある常連さんが借りていったものだ

「そのビデオ　ライトさんが面白かったって
言ってたな」

…………うわぁ。めちゃくちゃ酸っぱい梅干しに
当たった時みたいな顔してる
マサマサ親衛隊に見せてやりたい

「……じゃあ僕には合わないね　他のやつにするよ」

「悠真が他人への悪い感情をあからさまにするの
珍しいよね　何かあったの？」

「……かなりキモい事言うけどさ　実は『パエトーン』と
関わりがあるエージェント達のこと色々調べさせて
もらったんだよね　全員分」

「確かにちょっと引くね！？」

「……腹立つんだよ　生きられるのに生きようと
しない奴」

不治の病に苦しむ彼からすれば　自分から死へ
近付こうとするあの人は確かに気に入らないんだろう
どうやって調べたんだか聞きたくないけど

「まあそんなに死にたきゃ勝手に死ねばいいけど
アキラくんたちに迷惑かけないところで」

「悠真　その言い方はどうかと思うよ」

「……ごめん」

「でもそこまで意識してるなんて　好きの裏返し
みたいじゃない？　本当に嫌なら無関心になるし」

「なななな何言ってんの！トゲトゲの厳つい
ファッションでロリポップ好きとかギャップ萌え
あざといなんて思ってないし
あのデカいケツ一回引っ叩きたいなんて思って
ないから！！」

……風向き変わったね？？それはイライラというか
ムラムラなんじゃないのかい？
実を言うと当のライトさん本人は
『あいつはよっぽど俺の事が嫌いらしいな』
なんて寂しそうに笑っていたのだ
あちら側は嫌っていないどころか仲良くしたそう
なのだから　ツッコんで自覚させた方がいいんだろうか
好きな子ほどキツく当たっちゃうなんて
悠真にもかわいいところがあるんだなあ

「……なにさ　ニヤニヤしちゃってさ」

「別に　悠真はかわいいなって思っただけだよ」

「当たり前の事言われても何も出ませんけど？」

「せっかくだから　うちで何か見ていくかい？」

恋愛映画でも見せてお勉強してもらおうか
友人の哀しい顔はなるべく見たくないからね