晶さんが髪を染めようとするフィ晶♀ 昼下がりの太陽の光に、それはきらきらとまばゆく輝いていた。
「フィガロと、女の人……?」
市場へ来ていた晶は、小綺麗な文具店のショーウィンドウの前に、恋人の――フィガロの後ろ姿を見つけた。その隣には、長い銀色の髪を背に流した女性が立っている。
(用事があって魔法舎を空けるって、このことだったのかな)
珍しく早くに起きてきたフィガロは、それだけを言って出かけて行った。どういう用事なのかまで聞いていなかったし、晶が市場へ出かけることにしたのはその後だったから、まさか出先で会うだなんて、思ってもみなかった。
邪魔にならないよう、大通りの隅っこに立っているし、二人はこちらに背を向けているから、もちろん晶に気付いていない。ショーウィンドウの中をそろって覗きこみ、女性が何かを指差すと、フィガロが同意するように大きく頷いた。気心知れた仲のようだ。
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