「キラさんって昔からああなんですか?」
なんてことない、暇だったから尋ねただけ。ただの雑談に「端的にわかりやすく要件を言え」と言わんばかりに睨んでくる。はいはい、あなたはそういう人でした。といってもうまく言葉にするのは難しく、歯切れの悪い言い方になってしまう。
「なんていうか、人類皆平等っていうか、聖母みたいというか…」
視線の先には、整備士達と穏やかに話すキラさんがいる。白を着ている者とは思えない物腰の柔らかさ。階級関係なく親しげに話しているのをよく見かける。
「昔から、優しいやつではあったよ」
含みのある言い方に"そうではなかった"ことがわかる。フリーダムのパイロット。その戦績は凄まじく、つまり、それだけ敵を倒したということだ。
「泣き虫で、わがままで、優しくて、年相応に子供だった」
横目でみたアスランは、懐かしむように、でも少し悲しそうな顔をしていた。
「キラさんが泣いてるところなんて見たことないですけど」
「そりゃ、キラも大人になったからな。それに、部下に泣き顔なんて見せたくないだろう」
それが理由でないことくらい、アスランの表情から読み取れた。俺が部下だからじゃなくて、きっとアスランの前でも見せていないのだろう。
あの人が泣き虫だなんて、想像できない。わがままも、泣き虫も、俺は見たことがない。微笑んでいるか、少し悲しそうにしているか。俺たちに見せる表情は基本的にその二つだ。
キラはわがままで、面倒臭がりで、本当に困るまでやろうとしない。いくつ課題を手伝った?何度アイツを助けてきたか。兄弟同然で育った幼少期の印象はそう簡単に消えやしない。
でも、最近のキラがそうでないこともわかっている。二度の大戦を経験し終戦したとはいえ、まだ世界中で戦火は上がり続けている。平和のために、俺たちは動き続けなければならない。そこで、ある疑問を持った。もしかしてキラはずっと、困り続けてるんじゃなかろうか。