会場は人で溢れ全方位を人で囲まれていた。後ろからくる人に押され、前へ前へと進んでいく。上空に上がる花火に、近さなんて関係ないだろうと思いつつ近くで見る花火の迫力が魅力的なのも知っているためここにいる。人のことは言えないなと苦笑をこぼした。
横だとはぐれちゃいそうだから、と僕の後ろにピッタリとくっつくシンは打ち上がった花火を見て楽しそうに笑う。真下からみる大輪の花は、夜空から降ってくるかのように火花を散らす。小さいものから大きいものまで、色とりどりの花火を見ながらその明るさと消えてもまた花を咲かせる健気さになんとなくシンみたいだなぁと思う。フィナーレだと言わんばかりに何発もの花火が空に打ち上がる。終わりに近づくそれに寂しさを覚えながら、ふと違和感を覚えた。
花火に夢中で気づかなかったが、臀部に何かが当たっている。背後には隙間なくくっつくシンがいて何かなんて言わなくともナニが当たっているのか予想はつく。
最後に一番大きな花火を打ち上げ、花火大会終了のアナウンスがなる。帰路へ向かう人たちに押され、それはぐいぐいとさらに押し付けられる。
「シン…当たってるんけど…」
「キラさん、何か言いました?」
人混みで聞き取れなかったのか、シンは疑問符を浮かべて肩越しにこちらを見る。出口へ向かい、人の波は流れる。離れないように背後から腕を回され、その手は不埒にも前身頃の前から手を入れる。
「シン!?」
わかっててやっているだろう。忍ばせた手は胸元の飾りを掠め、臀部にはさらに硬くなったそれを感じる。こんな、人が大勢いるなかで、感じたくないのにいつもの熱を思い出して感じてしまう。
「キラさん。ダメですよ、こんなところで」
「…っ!シン、がっ!変なことするから!」
「何のことですか?」
すっとぼけながら手の動きは止まらず、掠めるだけだった指は、つねったり弾いたり指の動きを強くする。シンに口を塞がれ、痛みと快楽で漏れそうになった声は手の中で小さく消えた。
「だーめ。キラさんの可愛い声他の人に聞かせちゃ」
夏の暑さと、快楽と、口を塞がれたことにより意識が朦朧とする。後ろから抱きしめるシンに寄りかかり何とか立っているがこのまま歩くのは厳しそうだ。
「キラさん!大丈夫ですか!?」
先程までの煽る口調ではなく、本気で心配するシンの声。そういうシンの優しいところ、好きだなあって思う。でも、こうなったのは半分くらいシンのせいだし今日はいじわるしたい気分。
「だいじょうぶくない。シンのせいでもう歩けない」
「キラさん…ごめんなさい、俺、キラさんが可愛くてつい…」
「だからおんぶして。シンの家まで連れてって」
「え?」
「今日は帰る予定だったけど、このままじゃ帰れないからシン、泊めて?」
「よっ喜んで…!」
僕を背中に乗せて、人混みの中を進んでいく。今度は僕がシンの背中に張り付く。シンの耳が赤い。僕の興奮が伝わったのだろう。
「キラさん…背中、当たってるんですけど」
「シンだって当ててきたでしょ。帰ったらよろしくね」
さっきとは立場が逆転したみたいに今度は僕が主導権を握る。シンの家まであと10分。シンの背中は温かくて、眠気を誘う。心地よい振動と相まって僕は眠りについた。