「なんのつもりだ」
二月十四日。極東の一部地域では、女性が様々な想いを込めたチョコを贈る日である。国によっては、男性からだったり、チョコに限らないらしいが。
そういう日であり、それらしいチョコを購入し渡した結果の第一声だった。
「バレンタインですが」
「……どういう意味だ」
突き返されるのは想定していたが(我ながら嫌な慣れだ)、そもそもの意図を問われるとは思っていなかった。
「極東のここでは、本日は日頃の恩返しを兼ねたプレゼントを送る日、と認識しておりますが」
……舌打ちと共に箱を取られ、答えに不満はあれどひとまず納得してくれた、と判断する。とはいえ、すぐに返ってきたが。
「残りは始末しておけ」
「かしこまりました」
いつものように返事をする。
立ち去る足音を聞きながら、日頃世話になっている礼という名目でなければ、何も送れない自分に思わず笑う。
仕方ないではないか──芋虫からの愛など、気色悪いだけでしょう。