仲間の話――跳ねるように踏み込み、その勢いのままくるりと回る。想像の中では、スカートがひらりと舞い上がった。知らず唇が動くが、そこから声が漏れることはない。
「………………」
脳内で流れていた音楽が止まる。何かが納得出来ないが、それが何かが理解できない。首を傾げて、その正体を探る。落ち着かないけれど、それを考えることも少し楽しい。
「まだやってたのか?」
とはいえ、考えすぎていたらしい。声をかけられるまで、人が来たことにすら気付かなかった。慌てて振り向けば、呆れた様子の仲間がいた。
「熱心なのは良いけれど、やりすぎはどうかと思うな」
『ごめんね、ありがとう』
彼が正しい。そして彼の言葉が少し厳しくとも、自分を想ってのものだと分かっているから、笑って受け取る。
「スタッフさんたちも困ってるんだから、帰るよ」
そのことに思い至り、慌てて扉の外にいる彼らへ頭を下げる。気にしないで、と手を振ってくれるが、反省しなければならないだろう。
――しかし、である。まだ心の中のもやもやの正体が掴めていない。これが分かれば、きっともっと闘えるはずなのだ。
だから、
『春ちゃん、あのね、今晩泊まりに行ってもいい?相談したいことがあるの』
「……たまに思うんだけどさ」
ため息を吐かれる。
「僕も男だって理解してる?」
何を当然のことを言っているんだろう。
『知ってるよ』
カナリアのメンバーで、私の大切な仲間。
「……ならいいけど」
ほら、帰るよ。
言われて、その手を握って。何度目かになるか分からない彼の家へと向かった。