よろよろ歩いて来た七海が、顔をあげて「五条さん……」と一言つぶやいたきり固まってしまった。五条は、軽く首を傾げ、七海の前でパッパッと片手を振った。夕方の高専は生徒も下校して人は少ないが、廊下で突っ立っていてはさすがに邪魔だろう。
「どしたの、七海。疲れてんの? 任務明け?」
「…………」
「そういや出張って言ってたっけ。また連徹したの? オマエもアラサーなんだからそろそろ無茶すんなよ」
「………………」
「……聞いてる? 変な呪いでも憑いて……ないな。えー、じゃあ硝子の分野?」
「……………………」
「いま硝子のとこ連れてってやるか……ら?」
がしっ、と言葉の途中で素早く動いた七海の両手に胸筋を掴まれて、今度は五条が固まった。
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