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    suika

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    suika

    DONE先生とヒュンケルの出会いの話。
     まだ煙があちこちで燻る城内に、遠くから響く泣き声を追いかけた。

     階段を駆け降りるその先に見えたのは床にうつ伏せて丸くなった小さな小さな背中。顔を埋める灰の山に混じる崩れた骨のかけら、それも端から溶けて白い灰へと姿を変えていく。あの騎士が胸にかけていた星の飾りがそのうえにぽつりと落ちていた。
     魔王の力が消えた。それは即ち、その力によって歪な生を受けたものたちが本来あるべきところに還っていくということ。
     虚空に消えゆく骨と灰に縋って泣き叫ぶ子どものその後ろに続く暗い回廊には、累々と横たわる死骸があった。自分が斬り伏せた魔物たちの。――恐らくは、彼のとても親しいものたちの。

     ――この子か。

     足音に気付いたのか子どもがばね仕掛けの絡繰のように顔を上げた。まだ十の半分をやっと超えた程度だろうか。身につけているのは粗末でこそあるが汚れのない服。暗い燭台の灯りを映して弾く銀色の髪も、灰を掻く爪も短く整えられていて、日常の手入れがされた様子がある。まだこの年齢の幼い子どもがこれだけ清潔を保てているというのは、そこに手をかけ世話をしてやる誰かの存在があったということだ。
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