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    suika

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    suika

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    恋人の日記念でかきました!
    マァムとレオナの話。原作終了後数年、ヒュンマとダイレオが成立してる世界線です。

    #ヒュンマ
    hygmma
    ##星を抱く日

    お茶会「恋人同士って……何するの?」
     レオナは瀟洒なティーカップをごく小さなかちゃりという音をたてて置いた後、まじまじとこちらを見つめた。
    「……どういうレベルの話かしら?」
    「レベル……って、言われると。ただ、みんな恋人同士で何、してるのかなあって思ったのよ」
     うーん、と眉間に皺を寄せたレオナが首を傾げた後、ひとつ頷いた。
    「分かった。その話、初級、中級、上級があるわ。どれにする?」
     指を1本ずつ立てながらそう言ったレオナは、最後に3本の指をひらひらと目の前で優雅に振る。
    「……初級」
     『中級』と『上級』に込められた声の力強さになんとなく怯み、まずは段階を踏もう、とそう答えると「そうよね」とレオナはしかめつらしく頷いて指をしまい、にっこりと微笑んで生き生きと『初級』の話をはじめた。
    「最初はやっぱり、二人でお出かけでしょ? デートよ。大きな街にショッピングに行ったり。お茶をしたり、お花を見に行ったり。……まあ、今のは私の好きなことだけど。二人の好きなことを一緒にするの。……こういう話で、合ってるかしら?」
     まさにそういうことが聞きたくて尋ねたマァムはこくりと頷いた。
    「そう。お休みの日に何するのか、とか。好きなこと、かぁ。何かな。やっぱり身体を動かしたいわ。鍛錬とか、すっきりするし」
    「……そうくると思ったわ。いいのよ。マァムのそういうところ、大好きよ。でも、二人でするのよ?」
     突然声を低くして『二人で』のところを強めに言うレオナに、何があるかと考えてみる。
    「組手なら二人でできるわ」
    「はい。そうよね。分かったわ。でもヒュンケルって身体、大丈夫なの?一般兵とかの訓練相手ならともかく、貴方と組手したら大変なことにならない?」
    「そんな、組手で本気で当てたりしないもの。型だけよ」
     レオナはこめかみが痛いのか、綺麗に整った爪の指先でさすさすとそこを摩ってから何かを振り切るように言う。
    「まあ、いいけどね。二人が楽しいなら。でもちょっと他のことも考えてみない?……ヒュンケルの好きなことって、何なのかしら?」
    「好きなこと……そうねえ。時間があると、剣の手入れとか、してたけど」
    「却下!」
     レオナのただでさえ大きい目がまんまるく開いて鋭く叫ばれる。言ってはみたけれど流石にそれはないかも、とマァム自身も思ってはいた。
    「そうね、一緒にできないし……私の武器は普段使わないから、頻繁に手入れしないし」
    「そこじゃないわよ! それ以外にないの?」
    「うーん……」
     机を叩きそうな勢いで両の拳を握りしめるレオナの剣幕に考え込んでみて、そして気づいた。ヒュンケルは何が好きなんだろう?
     お互いの気持ちを確かめ合ったあの日からそんなに日も経っていなくて、その前の関係はずっとずっと仲間だった。一緒にいたのは戦いの中の時間がほとんどで、彼がいつもはどうやって過ごしているのか、何が好きなのか、ほとんど知らない。
    「……まだ、あんまりよく、知らないのかも」
     ふうん、とため息と相槌の中間のような声を喉から漏らしたレオナが「確かにね」と呟いて、くるりと大きな瞳を動かした。
    「……それなら、一緒にすることってもう決まってるわね。お互いに、話を聞くのよ。どういうことが好きで、どういうことが嫌いで、なんでそう思うようになったのか、って。そんなにかしこまらなくていいのよ。こんなふうにお茶をしたり、お散歩したりしながら」
    「ご飯を食べながら、とか?」
    「そう!」
     ぱぁと開く花のような笑顔でレオナが笑う。たしかに、それならなんとなく、しっくりとくる気がした。
    「そういうことなのね。……デート、とかって言うと気恥ずかしくて。今更だし、私、そういう感じじゃないもの。でも二人で話すために出かけたり、ご飯を一緒に食べたりするのって言われたら。……なんだかわかる気がするわ」
     レオナが心なしかつやつやとした頬をふふふ、と緩めて「分かってくれたなら何よりよ」と誇らしげに言う。
    「じゃあ、次私の番ね。中級と上級の話していいかしら?」
    「……それはまた今度にしましょう。私、初級、これからだから」
    「ちょっと、マァム、あなたホントは分かってるでしょ⁉︎ 私の話も、聞いてよー!」
     怪しくなりそうな話の展開に、横を向いたまま少し冷めた紅茶のカップに口をつけて飲み干すと、レオナがそれを無視して「ダイくんがね!」とそこそこ大きな声で話し始めた。思わず綺麗に並べられたお茶菓子の中から手近にあったマカロンを言葉を続けようとする口に差し込む。
     むーむーと不満の呻き声をあげたレオナがそれでも口からはずしたマカロンをしっかり優雅な仕草で食べ切って、紅茶を女王陛下手ずからとぽとぽとカップに注いだ。最後の一滴の金色の滴をきれいにカップに落としたレオナが微笑む。

    「まあ、いいわ。じゃあ、早く初級が終わるの期待してるわね!」
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