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    suika

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    suika

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    KZN48開催おめでとうございます!
    ミラドシアのスイカ割り大会のあと、みんなでビーチバレーをする使徒たちの話です。カプ無し。

    ビーチサイド・スプラッシュ!「皆さん、今日の修行はビーチバレーをしましょう!」
    『ビーチバレー?』
     綺麗に揃ってそう言う五人の使徒たちに、アバンは「はい」となぜか砂浜に似つかわしくないエプロン姿で頷いた。後ろには先ほどのスイカ割り大会でヒュンケルが切りまくったスイカで作ったデザートの数々がずらりと並んでいる。
    「いやなんで……ビーチバレーなんですか、突然」
    「スポーツの意義は、決められた制約のあるルールの中でどうやって勝利を掴むか、を考えるところにあります。砂浜は砂で足を取られますから、思ったように動けないものですからね。いつもと違う不利な状況で、限られたルールの中どう戦うか。それを考えることが今日の一つの目標ですよ」
     至極当然とも思える意見をさしはさむポップに、人差し指をふってもっともらしくアバンが説明をする。へええ、とダイが無邪気に目を輝かせた。
    「面白そう! ……でも、ビーチバレーって、おれ知らないや」
     不安げに振り返るダイに、ポップが「あとでルール教えてやるよ」と笑った。文句を言いつつも何かと面倒見の良い兄弟子に、アバンはニコニコと頷いた。
    「あと、夏といえば、ビーチといえば、バレーですしね! 勝ったチームには特製のスイカデザートを進呈しますよ!」

     ***
     
    「チーム割がおかしくねえ? 竜の騎士と最大火力の戦士にタッグ組ませたらダメだろ!」
     青い海、広がる白い砂浜。網と木の枝で簡易的に作ったネットの左右に分かれたその片側から、大きな不満の声が上がる。
     片方にダイとヒュンケル、もう片方にポップとマァム、のチーム分けで四人はネットを挟んでいた。
    「ポップ、自分の力に自信を持ちなさい。あなたの魔法でみんながどれだけ救われたか……私、あなたのこと、信じてるわ!」
    「……! いや……いやおかしいだろ。これビーチバレーだろ。魔法使えないだろ。おれだけ不利!」
    「今、ちょっと納得しそうになってただろ」
     そう異議を申し立てるのにずばりとダイが指摘して、ポップの「うるせえ!」という声が重なった。でもさあ、と首をひょこりとかしげてダイが言う。
    「大丈夫だよポップ。おれも竜闘気は使わないから」
    「おいー! 竜闘気『は』って言ったか? 何なら使う気だよ。お前らとおれじゃ身体能力が違いすぎるんだよ。肉体派組に頭脳派入れんな! おい姫さん!」
     どんと砂浜の砂を踏んで抗議の意を示しながらポップが振り向くと、ぴぴー、とレオナがコート脇の高い位置に設られた審判席から丸い形の笛を吹いた。なぜか優雅に傘と色付きの大きな眼鏡まで装備している。
    「審判って呼びなさーい」
    「何なの!? おい審判さぁん! ダイとヒュンケルは分けろ!」
    「不利な状況での戦いのための訓練、って先生がおっしゃってたじゃない。文句が続くなら減点しまーす」
    「いや、おい、今不利ってはっきり言わなかった? 身体能力で均等に分けたらダイとおれ、ヒュンケルとマァ……いや、違ぇ。今の無し! 無し!」
     何かそのチーム分けに思うところあったのか、ぶんぶんぶんぶん、と激しく首を振るポップに、レオナもとい公正なる審判が全てを統率する意思に満ち満ちて手をまっすぐに掲げる。
    「チーム分けは公正です。各選手、結果で示してね。じゃあはじめっ」
     ぴぴぴー、と有無を言わせぬ笛が砂浜に鳴り響く。もうどうやら言っても無駄そうだと判断したポップは「だれもツッコミいねえの?」と唸ったのだった。

     
    「渚の戦士様ー! がんばってー!」
     コートの周りに集まってきた人々の中から声援が上がった。先ほどのスイカ割り大会にいた少女達の一団が追いかけてきたらしく、こぞって手を振って飛び跳ねていた。はしゃぐ黄色い声がビーチに響く。
    「渚の戦士……ってだれ? ヒュンケルのことかな」
    「戦士一人しかいないから、そうじゃない? 面白い名前ついたわね」
     審判席のレオナを見上げたダイがそう交わす横で、当のヒュンケルは真剣な顔で手に乗せたボールを見つめて深く意識を集中していた。その横顔にまたきゃああ、とため息の混じったような声が観衆から聞こえた。
    「んなっ……モテてんじゃねえよ! くそ……こんなときまで」
     ぐぐぐ、と唸るポップの前でマァムが表情を引き締めた。腰を低く落としたマァムにヒュンケルがネットの向こうですう、と深く息を吸う。
    「くるわよ、ポップ!」
    「あっはい」
     ポップが体制を整える間もなく、ヒュンケルの腕が見えないほど素早く振られた。瞬間、ドゴ、と鈍い音を立てて砂浜にめり込んだボールが音を立てて砂の中に深く埋もれる。きゃああー、と響き渡る黄色い歓声を後ろに、コートに突き刺さりシュウウウ、と煙を出す勢いで運動の熱を放出するボールをポップはまじまじと見つめた。
    「ドンマイっ。次よ、ポップ!」
    「いやいやいやちょっ、待て待て。音がおかしいだろ。あれレシーブしたら腕折れねえ?」
    「ビーチバレーでそんなことないでしょ」
    「普通のやつがやるビーチバレーなら、ねえけどな!」
    「ダイくんとヒュンケルチーム、一点先取ね」
     ぴっ、と笛を鳴らしてレオナが宣言した。後ろで「戦士様〜!」「かっこいい〜!」とまたもや上がる歓声に、ポップはがくりと肩を落とす。
    「あれ、気が散るんですけどぉぉぉ」
    「ポップくん。さっきから文句ばっかり言わない。減点しちゃうわよ」
    「すぐ減点してくんなー。文句も言いたくなるだろ」
     ぴっぴっと軽く笛を吹くレオナにはいはい、とポップは首を振った。ツッコミが自分しかいない世界のようなので諦めを早くつけようという判断らしい。彼は賢明なのだった。

    「よし、いっくぞー!」 
     ぽん、と高くボールが空中に投げられた。それを追いかけて飛び上がったダイがジャンプサーブをすると、パンと小気味よい音がしてボールがネットの上を越えた。
    「くそっ……負けて、たまるかよおおおおお!」
     ポップの渾身の勇気が輝く。ザシャアと音を立てて飛び込むように砂浜に腕を伸ばすと、その拳の先にボールが当たって弾き上がった。
    「よし! ……頼んだぞ、マァムっ!」
    「任せて!」
     鈍い音を立てて空中に上がったボールの下にマァムが走り込む。深く息を吸い込んだマァムは、美しいフォームで飛び上がった。
    「くらいなさいっ!」
     目にも止まらぬ速さで振り下ろされた腕がボールを叩いた。
     バァン、と音がしてボールは鋭角にネットぎりぎりで差し込んだ。砂浜に着く直前で飛び込んだヒュンケルの腕に弾き返されたボールは、青い空に白い軌跡を高く描く。
    「ダイっ」
    「うんっ!」
     ヒュンケルとダイが以心伝心の呼吸でアイコンタクトを交わす。裸足の足が強く砂浜を蹴って、飛び上がったダイが振り上げた手を思い切り振る。
    「いくぞおおおおおっ!!」
     ダイの渾身の、全力を込めたアタックを受けて。

     竜の騎士の全解放された力に耐えられなかったふつうのボールは、パァァァン、と砂浜に響き渡る大きな音を立てて破裂し、四散したのだった。
     
    「あっ、あっ、あれ―――!?」
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