マクダノ×着圧ソックス思ったよりつけてみたら朝が楽でさ、そう言いながらダニーは器用に足の指でだらりと長いソックスを摘みこちらに投げた。
革靴でコンクリやら土の上やら、さらに足を取られる砂の上を駆け回っていたらそれは疲れるだろう。だからスーツなんてやめればいいのにとは思うが口には出さない。一言告げれば今日家に招き入れてくれたことは無かったことになるからだ。それは避けたい。
幼いグレイスのお泊まりの日ではあるが、珍しく父娘2人きりのところにお邪魔させてもらった身だ。
「……で?」
「さっきも見てたろ?グレイスがネイルしてくれたじゃん」
そういって差し出すダニーの手の指先、爪にはツンとした匂いと共に太陽のような明るい色をベースに爪先はグリーンというよりもう少し淡い色が乗っていた。何度も塗りを重ねた為かグレイスがお休みを言いにきてもまだ乾かず、時折ダニーは軽くボールを握るような手つきをしながらふーと息を吹きかけていたのだ。
あまり強く吹いてもいけないらしい。ヨレるとかなんとか。
「正直俺はもう寝たい。でも足が疲れてこのソックスは穿きたい」
「ああ」
「だからお前が穿かせて」
だから、からがよくわからない。
わからないといえば、ダニーからの距離感がたまにわからなくなる時がある。自分の恋心なんてとうに知っているだろうし、友情以上のキスだってしている仲だ。
ぽかんと見上げた俺の懐に背を預けるようにダニーは潜りこむと、ほれ、とまた手をかざす。
「グレイスが塗ってくれたのにぐちゃぐちゃになったらかわいそうじゃん」
「グレイスが?」
「俺も」
「ダニーも?」
「俺がかわいそうなのは嫌だろ?」
それはそう。
ダニーが悲しむのも痛い目に遭うのも全てから守ってやりたい。子供扱いでも弱いもの扱いをしているわけでもない。ただただ好きで好きで愛おしくて、だから抱きしめたいのだ。こんなふうに。
ぎゅっと抱きしめることにダニーはいまは何も言わない。ただ指先だけは死守するように両腕を軽く上げている。
「だから穿かせてよ」
結構圧が高くてさ、でも力任せにぶち切るなよ?そしたら弁償させるからな?
そういって体を縮こませるようにぐりぐりと後ずさる。
まてダニー、当たる……。
わざと、か?
片方を手にし膝を曲げるダニーに靴下を当てがう。
にやりと笑うダニーの顔は見ないように、あくまで視線はダニーの爪先。でも意識は自分の股間にいくのは否めない。
「ふっふっふ、」
「っ、わざと、だろ」
「どうかなぁ、靴下穿かせてくれたら教えてあげる」
ああ、本当に、愛しくてたまらない。