木洩れ日 いつも、この二人の間にはあまり双方向の会話がない。煉獄が何事か話しかけ、それに冨岡が聞こえないような返事をする。それだけだ。だいたいは、煉獄が一方的に喋り、笑い、納得して終わっているように見える。だが、特に不都合はないようだし、任務のときなどは互いに絶妙な間合いで動くことができる。
しかし今日は、ただ二人で座って、黙ったままで時間が過ぎていっている。煉獄は珍しく無言で、冨岡はいつものごとく無口で、間に置かれた二つの湯呑みと、初夏の風が渡るさわさわとした音だけが、辺りを満たしている。
数日前の任務で、煉獄は鬼に首元を掴まれて喉をやられてしまい、声が出なくなってしまったのだ。こればかりは喉を休めて回復を待つよりほかないので、自宅でおとなしくしていた。隊士への指示が出せないので、任務も数日は休みだ。そこへ、冨岡が訪ねてきたというわけだ。
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