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    ねずみ

    腐とかじゃなくても落書きでも1枚でも載せるオタクの絵ブン投げ部屋。

    パロディとか特殊設定とか女体化が多い

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    ねずみ

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    唐突に降りてきたコミック風味のスパデプ文章
    珍しくいい感じにオチがついたので晒し〜
    キスとハグだけなのは🕸️先輩の策略です。

    君の負け「スパイディ、俺ちゃん、10年くらいNYを離れようって思ってる」
    唐突だった。何故か泣きそうな顔をしたウェイドが人差し指同士を突き合わせながら、まるでお皿でも割った子供が罪を打ち明けるようにして言ったのだ。
    ウェイドは嵐のような人間だ。気分も嵐のように目まぐるしく変わるのは知っているので、その発言くらいでは動揺するのも億劫になるほどには僕もウェイドに慣れていた。
    「理由を聞いても?」
    こう言うときの、どうしようって顔をしたときのウェイドはコチラが丁寧に質問をすれば答えてくれる。彼の気分次第で、本当に10年、唐突に連絡が取れなくなる可能性だって十二分にあったのでむしろこうして打ち明けに来たのはまだマシな方だ。
    「スパイディのこと、忘れたくて…」
    「はぁ、僕のこと嫌いになったんだ?」
    「ち、違くて…俺ちゃん、スパイディが好きじゃん。それだけでいいのに、スパイディが俺にハグしたりキスしたりするから、忘れたいのに、忘れられなくなっちゃって…」
    ウェイドの言う「忘れる」というのは、一般的な人とのそれとはかなり違う。
    物理的に記憶から消そうとするのだ。ウェイドはそれを可能にする手段を持っていた。成功率は悪くないらしい。
    つまり、その「忘れる」手段を持ってしても、ウェイドは僕との出来事を忘れることができなくなってしまったので距離を置きたいと。そう言うことらしい。
    ふぅ〜、とため息を長く吐く。ウェイドは怯えたようにチラチラとコチラの様子を窺った。
    「そう…で、なんでそれを僕に報告しに来たの?」
    「えっ…と、それはぁ〜、あの…一旦のお別れを言いに来ようかなって思って…」
    「ウェイド」
    取り敢えず戻って来る気はあるらしい。それに僕は安心する。だって、忘れるためにここを離れるって言うけど戻ってくるつもりがあるのは、完全に僕を忘れる気は無いってことだ。
    それにこれまでの苦労もある。それが無碍にならなそうなことにも安堵した。
    「なんで忘れられなくなったと思う?」
    「え…?」
    「君の脳みそを作り変えても僕のことを忘れられなくなったのはどうして?」
    「…俺がウェブズのこと好き過ぎるから?」
    「違う」
    もう一度、ウェイドはポカンとしながら「え?」と口にした。その顔を可愛いと思う僕も結構毒されたなと我ながら感心した。
    「忘れるたびに君にハグをしてキスをしたからだよ。」
    「えっ…」
    「本当、ほんと〜に長かったよ。もう途中からは意地になってたな。」
    「えっ、えっ…」
    「ねぇ、君が忘れたいのは僕のことじゃないよね?だって君、最初に頭吹き飛ばしたときだって僕のこと自体はわすれなかったもんね。」
    1回目は親愛のハグだった。いや嘘。ちょっとだけ劣情はその時点であったかも。だって本当に親愛だけのハグをしたときはそんな事しなかった。ウェイドはなまじ長い間そのまともとは言い難い人生を歩んできているのでそういう感情には敏感なのかもしれない。
    よ!俺ちゃんデッドプール。アンタのファンなの!よろしくね!
    昨日あったばかりの狂人にまるで初対面かのような挨拶をされたときは驚いたもんだった。
    「あ…」
    忘れたいほど嫌だったのかと最初は本気で落ち込んだ。だというのに、2回目はウェイドからだった。忘れるから、アンタも忘れてねと言い、ウェイドだけマスクを上げてキスをされ、目の前で頭を撃ち抜いたのだ。
    そうして、3回目、4回目、5回目あたりで、僕は腹が立ったのだ。コイツの意味不明な情緒に振り回されっぱなしだと。でももうその時にはこの男をほっとけないほどには情が…いや。もういい。ウェイドが好きだった。
    ウェイド、僕が好き?だよね。知ってるよ。僕も好き。君も僕も好き同士だ。君のその意味の分からなさにはもうそろそろいい加減慣れてきた。だから付き合ってみようよ。
    また目の前で繰り広げられた6回目で、これは持久戦になるな、と。重いため息を溢したのはいい思い出…というには正直まだ苦い。
    「で。僕とのキスやハグが忘れられなくなっちゃったから、今度は距離をおくって?どれだけ勝手なんだよお前はさ。」
    「な、なんかいも、って、前のは、何回目?」
    「さぁ。もう数えてないよ。」
    ひえぇ…とウェイドは縮こまった。何でそんな怖いものを見る目をしてるんだ。その態度をとるべきはこっちだろ。
    「あのさー、君が忘れても何十回もキスしてハグした事実は消えないからね?だって僕が覚えてんだもん。10年経っても忘れるのは無理な回数だよ、君との我慢比べは。」
    淡々と事実を述べるように言う。ちょっとでも甘さを見せれば、ウェイドは飛んでいってしまう。
    「それに、君ももう忘れられなくなったんでしょ?で、その上でまだ僕が好きだって態度出してるしNYを離れたって暫くしたらこっちに戻るつもりなんでしょ?」
    赤を基調にした、黒い部分のくり抜かれた目が困り果てたように垂れ下がっている。その顔を見て、僕はざまあみろと思い、頭頂部の余った布部分を引っ掴んでやった。
    「諦めなよ、もう。君の負けだから。」
    僕がウェイドを好きになるのが気に食わないのか、ウェイド本人が誰かのものになる気がないのかは知らないが。どう見たって僕の粘り勝ちである。
    ウェイドは、ハッとしたように素早い動きでホルスターに手をやる。
    「いいよ。撃ちなよ。どうせもう忘れられないんだろうけど。ははは、なんかスッキリした気分だな。あのデッドプールに傷跡を残せたなんてさ。」
    「…ウェブズ、アンタって酷い人だ」
    「お前には負ける。」
    もう癖なのか、ホルスターに仕舞われている鉛をウェイドは握ったままそれを抜くことはせず、黙って僕のキスを受け入れた。
    ようやくウェイドも諦めたらしい。僕は人生でトップクラスの達成感を味わうのだった。
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