ぬいちね 気にかける 夏の大会以降、知念が今まで以上につきまとってくるようになった。どうしてだかは知らない。知念の考えている事は昔から分からないのだ。
知念の幼馴染である平古場に相談すると、彼は大袈裟にため息を吐いて、本当に分からないのか、と聞いてきた。
「わ、わからないから聞いてるんばーよ!」
「お前の練習試合が終わったら水を持ってきて、汗を拭こうとして、日陰に連れて行って、毎日欠かさずそれをしてるのにか?」
そう畳み掛けられ、不知火は記憶を呼び起こした。コートから出た後、無言で頬に冷たいペットボトルを当ててくるのも、タオルを持って不気味に微笑んでいるのも、何も言わずに腕を引こうとしてくるのも、全て不知火の体調を気遣っての事だったのか。そして、それはきっと――あの夏の日、知念のいる前で倒れたからだ。
「分かったか?」
「あ、ああ――」
それじゃあ行くからなと平古場は立ち上がる。残された不知火は、自分を心配してくれた知念の顔を思い出し、やっぱりあれじゃ分からないなと頭を抱えた。
「知念!」
部活の時、不知火は知念に声をかけた。不知火から話しかけられる事がほとんどないので、知念は反応が遅れてポカンとしている。
話しかけられてそんなに驚くのか。そういえば自分から知念に声をかけた事などほとんどないなと思った。
「気づかなくてわっさん。部活の時、俺のこと心配してくれたんだよな」
話したい事が何か分かったのか、ああ、と彼は緊張を緩める。
「やしが、ちゃーしてそんな、俺のこと……」
「どうしてだろうねぇ。でも、不知火のこと、大事やし……」
自分でも初めて気づいたように、知念は言葉を紡ぐ。そして合点がいったように頷いた。そうか、大事なのか。不知火の事が、と。
「……うん。不知火の事が大事だから」
「に、二回言わなくていいやっし!」
顔を真っ赤にして不知火は声を荒らげる。クスクスと笑って、知念は不知火の頭に手を添えて、ぐりぐりと撫で回した。