冬の星息を吸うと鼻の奥がツンと痛くなる。息を吐けば暗い空気が白に染まり、身体の芯まで冷えきってしまいそうだ。冬の朝の澄んだ空気は好きだが、夜はどこかこわい。
ーーこんなに寒い冬の日に、恋人がどこかへいなくなってしまった。
「……っめぐみ、……」
小さい頃から自由で生意気な子どもだったが、こんなことは今までになかった。
寮、教室、自身の家、色んなところを飛び回って必死に探したが見つからず、悠仁や野薔薇に聞いても分からなかった。
「……あ、」
ひとつだけ、思い当たる場所がある。
「…………いた。」
艶のある黒髪を跳ねさせ、黒いコートを纏い空いっぱいの星空を見上げる、僕の恋人。
「……さとるさん、」
鼻先も、耳も真っ赤で、すこし震えているように見えた。
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