melancholy typhoon 長時間集中し、出来上がったデータを確認して。志保は深く息をついた。
「ようやく一息? 宮野さん、集中しすぎよ」
向かいのデスクから呆れを含んだ心配の声をかけられ。その同僚の女性に志保は小さく笑みを浮かべる。
「厳しい取引先からの依頼だから。気が張っちゃって」
志保の言葉に、そんな仕事内容あったかしら?という風に首を傾げている同僚にさらに苦笑して、ゆっくりと懲りこたまった腰を上げる。
手にしたのはデータを移したUSBメモリと、デスクチェアに描けていた薄手のカーディガン。季節の変わり目の今は、服装での体温調節が難しい。今日の薄曇りの気候では、このオフィス内と一歩出たビル内と、どちらが冷えているのかも分からなかった。
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