やまぶき

好きなものを好きなように
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☆こそフォロ
ポイポイ 35

やまぶき

供養学パロ種運命
生徒会長のアスランが気に入らないシンくんのお話、になる予定だったもの
桜吹雪く4月のこと。新品の制服に身を包み、これから始まる高校生活への期待に胸を膨らませていた俺は、登校初日から校長室への呼び出しを食らってしまった。俺、なにかヤバいことでもしたか……?期待は不安と焦りに黒く塗り潰されていった。

「やあ、シン君」
おそるおそる扉を開くと、入学式の挨拶でひときわ目を引いていたギルバート・デュランダル校長が出迎えてくれる。黒色の長髪に整った顔立ちが、なんともいえない美しさを醸し出している。近くで見ると、なおさら圧倒されてしまった。
「は、はじめまして。ところで……俺、なんで呼び出されたんですか」
言葉を発してから、(一応)学校で一番偉い先生になんてぶしつけな態度を取ってしまったのだろうと、顔が真っ赤になる。するとデュランダル校長は笑って答えてくれたのだった。
「そう堅くならなくていい。君に説教するために呼んだわけではないのだよ。……少し、頼みたいことがあってね」



「なあ、レイ。なんでこんなこと引き受けちゃったんだろ、俺……」
「自分で決めたことだろう。最後まで責任を持つことだ」
レイの言葉に何も言い返すことができなかった俺は、気分を紛らすために辺りの風景を見渡す。新緑だった筈の木々の葉は深緑へと変わっていた。そんな季節の移り変わりにすら気付けないなんて、どれだけ疲れていたのだろう。

……高校生活は散々だった。同じく生徒会に所属するレイと、クラスメイトのヴィーノ、ヨウランと新しい友人ができたのはいい。入学式の日、デュランダル校長から頼まれたこと。これが俺の頭を悩ます一番の要因となっていた。
『生徒会……?』
『そう、君には生徒会に入ってほしいんだ』
デュランダル校長は、俺に生徒会に入るよう頼んできた。一体俺のどこをどう見て判断したのか全く分からないが、校長直々に頼まれたとなっては断るわけにもいかなかった。それに、生徒会という学校内のトップに選ばれた歓喜のあまり、引き受けてしまった。この先待ち受けている災難を、当時の俺は知る筈もなかったのだから。

別に、生徒会の活動自体は嫌いではない。全てはそう、生徒会長のあいつという存在のせいだった。

生徒会長アスラン・ザラ。この人の存在がとにかく鬱陶しくて仕方なかった。勉強もスポーツも万能にこなす優等生。生徒会の仕事もきちんとこなす。おまけに整った顔立ちと冷静沈着だと思わせる姿が女子達を虜にし、あちこちでキャーキャー言われている。まさに絵にかいたような生徒会長サマだ。

……しかし所詮表向きだけだ。優等生で仕事も素早くこなすのと、顔が良いのは百歩譲って認めてやる。けれど、冷静沈着と言われているが実際は幼馴染のことになると騒がしいし、なにより俺がなにかをするたびに難癖つけてきやがる。俺があの人につっかかっているからいけないんじゃないか?何を言う、俺は正論しか言ってない。レイだって「会長の言い方はきついものがある」とか言ってるし。だから俺は悪くない。絶対に、何がなんでも悪いのはあの人だ。1251 文字

やまぶき

供養手荒れの酷いルーティのために何かしてやれることはないかと慌てるスタンの話、だったもの
死者の目覚め使えないのに階段はドタドタ昇っていいのか、というミスを今更発見しました……
部屋に射し込む陽と、布団の柔らかさが心地よいらしくすやすやと寝入る青年の顔が思わず緩む。しかし、その穏やかな空間を打ち破るようにドタドタと苛立ちを含んだような階段を上る音が響く。

「ちょっとスタン、いつまで寝てるのよ!」
「!…ルーティ…?」

大きな音を立てて開かれた扉の音に驚いたのか一瞬スタンの頭が持ち上がったように見えた、がすぐに今起こったことが無かったかのように再び眠りに落ちていく。はあ、と溜め息をついたルーティは布団にくるまるスタンのもとへと近づいていく。だがいつも彼を起こすために使っているお玉とフライパンが、今日は手元に無い。

最近やけに冷え込んでしまったせいか、孤児院の子どもたちの間で風邪が流行した。全体的に見てだいぶ落ち着いてはきたものの、長引いて未だに寝込んでいる子もいた。
スタンの妹直伝の『死者の目覚め』は目の前ですやすやと眠る寝坊助な彼を一発で起こすことのできる強力な技だが、孤児院どころか外まで響くほどの強烈な音が鳴る。眠らせておかねばならない子どもがいるなか、その技をむやみやたらに使うわけにはいかない。

だがルーティは、冬だからこそできる対スタン用の強力な目覚ましを持っていたのだった。これなら子どもたちを起こしてしまう心配もない、そしてルーティ自身にも多少の利点があるのでとても重宝している。

「ほら起きなさい!」
「も~まだ朝…わああっ!?」

ルーティの手がスタンの首もとに当てられ、彼女の手の冷たさが直に伝わる。じわじわと全身に広がって行くその冷たさに目を覚まさざるを得ない状況になってしまい、スタンは飛び起きた。完全には開かない目でだがら、なんと目の前に立つルーティの姿を捉える。彼女は勝ち誇ったように満足げな笑みをこちらに向けていた。

「おはようルーティ…」
「おはよう、じゃないわよ!さっさと朝ごはん食べて仕事手伝って頂戴!」
「はーい…」

呑気なものね、とルーティは呆れるが、前よりも素直に布団から出るようになったスタンの姿に感心した。比較的温暖なフィッツガルド地方出身の彼に寒さというものは少し苦手と感じるところがあるらしい。
加えて、水仕事で自分でも驚くほどに冷えた手を、子供体温と勘違いするほどにあたたかいスタンに当てることにより多少あたためることができる。どちらにとっても利点のある手段だった。

ルーティの手の冷たさには起こされる度驚かされる。お陰で目覚めることができているもののやはり慣れるものではなかった。あくびをしながらスタンは自分の首の少し冷たくなってしまった部分に手を当てた。スタンは、自分の体温は子供みたいにあたたかいというのをルーティや子どもたちに散々言われていた。そこを利用されているのでは、と薄々気付いてはいたがルーティの満足げな笑顔を実は癒されてよろこんでいるのではないかと思い込んでいたスタンにとってそんなことはお構い無しだった。

しかし、いつもそんなに手が冷たいとなると自然と手も痛んでいくものだ。
自分の首から離したスタンの手には、少量だがなにやら赤いものが付着していた。一瞬ゴミかなにかと勘違いしたが、擦ってみても取れなく、逆にひろがってしまったというような様子しか見られない。

「血?」

別に首が痛いわけでもなく、と言って自分の手から出血している様子も見られない。となると、これは自身のものではないだろう。そして、先程の出来事と結び付けてしまえば原因を探るのは容易なことだった。1445 文字
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供養レイズ軸のセネシャリ
「元の世界で亡くなった筈の人が生きている」という話が出たとき、この二人はなにを思ったのだろうか、という妄想がもとになっています

現在配信分のレイズに全く追い付けていないのですが、この話に関しても何かしらの展開があったのでしょうね、と2部止まりの超絶ライトユーザーは思います
ある日の昼下がり、食堂の前を通りかかったわたしとお兄ちゃんの耳に聞き慣れない笑い声が届いた。誰の笑い声なのか気になって覗いてみると、そこにはマーテルさんとミトスさんがいて、楽しそうに会話をしていた。そう、笑い声はミトスさんのものだった。険しい表情しか知らないわたしにとって、その光景は衝撃的でもあり、少し嬉しくもあった。

「ミトスさん嬉しそうだね」
「でもあのマーテルって人、もとの世界では既に死んでるって……」
「お兄ちゃん、もしかして……」

お兄ちゃんの表情がたちまち曇ったのをわたしは見逃さなかった。……きっと、死んでしまったお姉ちゃんのことを思い出しているんだ。
お姉ちゃんはお兄ちゃんが好きで、お兄ちゃんもお姉ちゃんが好きだった。二人は惹かれあってた。お兄ちゃんはあの時、お姉ちゃんのこと思い出にするって言ってたけど、好きだった相手のこと、そう簡単に思い出にできる筈ない。二人で暮らしていた時も、寝言でお姉ちゃんの名前を呼んでたりしたんだもの。きっと、お姉ちゃんが蘇る可能性に期待しているのかもしれない。

「もしかしたらお姉ちゃんが蘇るかもしれないね。そしたら……」
「シャーリィ!!」
「!」

励まそうとして掛けた言葉は無駄になった。お兄ちゃんはずんずんとわたしに詰め寄り、じっと見つめてくる。まるで怒っているかのような様子に、思わず肩がはね上がった。けれど、お兄ちゃんは怒っている訳ではなく、発せられた言葉はとてもやわらかな雰囲気を持っていた。

「俺、あの時言ったよな?ステラのことは思い出にするって。ステラが望んで死んだわけじゃないことくらい分かってる。そりゃ、生きてて欲しかったさ。……けど、生き返りたいとは思ってない筈だ」
「……」

ああ、あの時の言葉は本当だったんだ。改めて実感する。そうだ、きっとお姉ちゃんだって生き返りたいと望んではいない。お姉ちゃんはわたしたちを守って、命を全うして死んでいった。無駄に死んだわけではない。

「それに……忘れたのか?今一番大事なのはシャーリィだとも言った」
「お兄ちゃん……」
「シャーリィ、俺はもう思い出に寄り添い続けるような真似はしないって決めたんだ。今を生きるシャーリィの隣を歩こうって決めた。だから……そんなこと、もう言うな」
「……うん」

お兄ちゃんは辛そうにしているわけでもなく、悲しんでいるわけでもなく、ただ微笑んでいた。……強いね、お兄ちゃんは。わたしだったらきっと、本人が望んでいなくても生き返ってほしいと願ってしまうかもしれない。だって好きだった相手なんだもの。
でも、お兄ちゃんはそれを振り切ってわたしを選んでくれた。だから、わたしはお兄ちゃんの隣を歩いても恥ずかしくない女性にならないと。1144 文字
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やまぶき

供養賽殺し編をベースとした、高校生になった梨花ちゃんの話
業視聴前に書いたものなので部活メンバー全員興宮の高校に通っていたり、"彼"が目覚めていて1年遅れで入学していたり、業から見ると梨花ちゃんと沙都子の立場が逆転していたりと自分勝手な妄想まみれ、かつ全体的に設定が甘かったため途中で止めています
以前、とある夢を見た。私が沙都子に勝負を持ちかけて自転車をとばし、トラックにはねられるのだ。ばかばかしい内容だが、ついに昭和58年6月の悪夢の連鎖を断ち切ることができた私は実際調子に乗ってはしゃいでいた。
現実ではトラックにはねられたりひかれたり、なんてことは無かったが、「先生との約束を忘れたのか」と皆にしかられるほど、自転車をとばしたこともあった気がする。

だが自転車のくだりはほんの序章で、昏睡状態となった私が夢として見たらしい本題の中身は今まで経験してきた悪夢と似ているようで全く異なるものだった。また惨劇の繰り返しかと思いきや、村も仲間たちも別物だったのだ。
仲間たちが各々抱えている罪がない分、本名の礼奈を名乗るレナは一見変わらないようで包容力が無いし、魅音は私の知る詩音そのものなせいか合理的だが冷血だし、沙都子に至ってはワガママに育ちいじめっ子と化していた。
どうもこの世界を生きていたはずの古手梨花と私が入れ替わっていたらしく、男子たちの女王様のような存在であり、村がダム底に沈むことが決定していたが故に引っ越していった男子たちに置いていかれたかのようになり、クラスメイトから「ザマアみろ」と思われている梨花の立場になってしまったのである。
一瞬、そんな古手梨花を恨んだものだが、現実の自分も女王のような振るまいをしていたのではないか、と気付かされたものである。

この、ある種の悪夢は他にも考えさせられるような点があったのだが今回は割愛しておく。というのも、今の私が直面していた問題がこの夢のこの部分と関連付けられると思われるからだ。

* * *

あの日から数年、私は高校生になっていた。
通学先は興宮に唯一ある県立高校で、魅音と詩音はもう卒業してしまっていたが、今は圭一とレナと悟史、そして沙都子と共に村から通っている。
だが圭一たちは当然ながら学年が違うために校内で会うのは昼休みくらいだし、沙都子はというと新しい友人に囲まれ楽しそうにお喋りをしていた。そして私は、教室の片隅で窓の外をながめることが日常と化していた。桜の葉が青々と輝く頃となるとグループが生まれていたが、私は未だにどこにも属していなかった。教室に入るまでは沙都子が一緒にいてくれるが、すぐ誰かに呼ばれて行ってしまう。

このような事態になっている理由は明白だった。村の中でも学校でもちやほやされて育ってしまった私が新たな環境に適応できていないのだ。村では自ら何もしなくとも皆から声を掛けられたものだが、この環境下ではそんな他人よがりなことなど起こりもしなかった。
時折誰かがこちらを向くが、最初はさそってあげようかどうしようかという目だったのだが、いつからか独りぼっちでかわいそうに……という同情的な視線に変わっていた。

長年共に歩んできた大変気まぐれな同志は最近はずっと社にいて、覗きに行くと見せかけて相談に行くと「僕はドラえもんじゃないですよ。梨花は早くのび太くんを卒業しないとダメなのです」と非情にも、説教だけを残して消えてしまうのだった。
魅音が村の学校を卒業すると同時に「実家に帰る」と言い訳して皆の前から姿を消したような存在だ。真後ろであうあう言っていたかと思えばこんな応対をするように、気まぐれなのは今も昔も変わらないのだが。

* * *

「ドラえもんとのび太か、そりゃ分かりやすい例えだ」
昼休みになり食堂に集った……と言っても、悟史は定期検診があるとかで早退、沙都子は教室にてクラスメイトと弁当をつつきあっている。よって、この場は圭一とレナと私の3人だけだった。気まぐれな神との会話を、遠方の実家へと帰っていった彼女との電話という話に置き換え打ち明けたところ、圭一はあの頃より低くなった笑い声をたてるのだった。
「圭一くん、笑いすぎ。梨花ちゃんは真剣なんだよ?」
「いいのですよ、レナ。笑い話なのは事実ですし」
スマン、と片手を立てて謝る圭一だが、口角が上がったままである。隣に座るレナがとがめるが、以前と比べてよりいっそう整った彼女の顔もどこかゆるんでいる。そして私もこんなことを言うが、正直なところ全く笑えない話だと思い込んでいた。圭一のデリカシーの無さは相変わらずのようだが、レナまでこのような表情をみせるとは思わなかった。
「でも梨花ちゃん。私たちは羽入ちゃんの話、よく分かるな。梨花ちゃんもいつまでもそうしていたくないでしょう?」
痛いところを突かれ、持っていたはしが止まる。季節は初夏、もうじきセミもなき出す頃となるだろう。そんな時期になっても未だに同級生と日常会話のひとつも交わせない事実の深刻さは十分分かっていたつもりだった。だが、こうして今でも圭一たちを付き合わせてしまっていては進むものも進まないだろう。
「こののび太には、何人ものドラえもんがいるみたいね」
怪訝な顔で見つめあった二人を置いて、私は中途半端に残したうどんの乗るトレイを持ち上げた。

* * *

朝は極力、皆で学校へ向かう。自転車にまたがり家を出て、まずは北条家で悟史と沙都子と合流する。次にレナのもとへと向かい、最後に日によって髪がボサボサだったりYシャツがはみ出している圭一を拾って村を出る。 

ここにかつての部長の姿は無いが、全体的な活気としては昔に負けていない。先頭を走る圭一が調子の良いことを言っては皆で笑い、時に馬鹿にする。
このささいな日常の一コマが、学校の6コマの授業より大事に思えてならない。この時は永遠に続かないからだ。かつて魅音が卒業し、圭一とレナも卒業していったように、来年はここから圭一とレナと悟史がいなくなる。悟史にベッタリだと思っていた沙都子が学校で起こったことを話題にして場を盛り上げるようになったのも、いずれ訪れる変化の前触れか。

「梨花?りーかー!?」
興宮に入り、学校が近づくにつれ私は自転車の速度を落としていた。ずいぶん前のほうから早くしないと置いていく、と沙都子がさけんでいる。いつの間にこんなに離れてしまったのか……。今行きます、とさけび返し、自転車のペダルを強くふみこむ。急にスピードを出したがために朝の風が強く吹きつける。なんとか追い付きそうになり、おまたせなのです……そうさけぼうとした矢先であった。車のクラクションと沙都子の悲鳴が重なった気がした。デジャヴ――……その単語が脳裏をよぎった直後、私は意識を失った。2640 文字

やまぶき

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3誕祝いをしようとして途中で投げたやつ
「さんぞーのお祝いがしたいから手伝って」
突風のように現れた小猿は、この家の持ち主(の同居人だが)の『いらっしゃい』という声が掛かるより前に来訪の理由を告げた。玄関で仁王立ちしたままの小猿こと悟空を呆然と見つめてしまった八戒は、晩秋の冷え切った外気にさらされ我に返り、慌てて彼を中にまねき入れた。自ら見につけたのか、グルグル巻きのえりまきをほどいてやりながら八戒は悟空の唐突な話の訳を聞いた。
「前にたんじょーびって何って三蔵に聞いたことがあるんだけどさ、『ウデにヨリをかけた料理とかでソイツの生まれた日を祝うモンだ』って教えてくれて。ウデにヨリを、ってのがよく分かんねえけど要はトクベツな料理ってことだろ?」
だから八戒のトコに来た、とほおを熟れたりんごのように赤くして悟空は語る。子供ならではの無邪気な瞳でこのような話をされてしまっては、八戒も下手なことを言えなかった。それに三蔵の話を悟空は自分なりにきちんとかみくだいている。こんなふうに祝ってくれる人がいるなんて幸せ者ですね、と三蔵の面倒臭そうな表情を思い浮かべては少し嫉妬している自分に八戒は苦笑した。
「分かりました。オーダー通り、腕によりをかけた料理を作りましょう」
「おい八戒、コイツ単にお前の作るメシが食いたいだけなんじゃねェか?」
はしゃぐ悟空の声で目を覚ましたのか、眠そうな目をこすりながら悟浄が部屋から現れる。まだ覚醒しきってはいないようだが、不快感をあらわにしたトーンでこのような発言をするあたり、一連の流れは理解しているらしい。親指で指された悟空はもはやお決まりと化した文句を並べている。そんな、いつもの光景とも呼べる姿をながめながら、八戒の脳内は早速三蔵誕生祭の準備に取り掛かっていた。

* * *

ある朝、三蔵は訳も分からないまま悟空に連れ出されていた。例年通りならもうじき雪のちらつく頃である。かじかむ手を法衣の中につっこんでどうにかやりすごしながら、下手なスキップで進んでゆく小猿を目で追う。寺を出る際、行き先はナイショというふうに『とにかくついてきて』と悟空は話していたが、この道は明らかに三蔵があきるほど歩いたものだった。
「おい、ろくでもない用事だったらブッ飛ばすぞ」
「だから大事な用事だって言ってんだろー!」
最初は引き返そうか迷った三蔵だったが、悟空を放っておくとなおさら面倒なことになるのは承知の上だったので、今回もこうして仕方なく付き合ってやっている。
それに良く言えば正直者だが、悪く言えば嘘が苦手な悟空が珍しくねばっていたため、知らずのうちに興味を惹かれ始めていたこともある。そんな複雑な心境を抱えながら、かれ葉の上をザクザク歩いていった。

予想通り、見慣れた小さな家の前にたどり着き、三蔵は深い溜め息をついた。いつものように悟空が扉をたたくのを待ったが、今日はいっこうにその様子を見せない。流石に声を掛けようとしたその時、悟空は急に振り返り言い放った。
「三蔵はここで待ってて」
急に連れてこられたと思いきや、この低温の中で待てとはどういうことか。遂に三蔵は悟空をにらみつけるが、当の少年はいつになく真剣なまなざしを向けてくる。今日だけはと言わんばかりに貧しい語彙を駆使して三蔵を扉の前で留めようとする姿に、だんだん疲れてきた三蔵は明後日の方向を向き煙草を取り出した。説得に成功した、と三蔵の態度から決めつけたらしい悟空はゆっくりと中に入ってゆく。一体なんなんだ、と呟く代わりにひとつ舌打ちをし、手にした煙草に火をつけた。

半分ほど吸っただろうか。たゆたう煙をぼうっとながめていた時、突然扉が開き、中から聞きなれた呼び声がかかった。
「うるせぇんだよ、てめぇの声はデカすぎだと散々……」
「さんぞー、ハッピーバースデー!!」
三蔵は家の中に足をふみ入れた途端、パンッという破裂音3つと、火薬のにおいと紙くずに迎えられた。何が起こったのか瞬時に判断できなかったが、目の前で呆然と立ちつくす男3人の様子から察するによからぬことが起こったのだろうという見当はついた。その証拠に、長身の派手な髪色の男が唐突に吹き出した。
「ご、悟空!クラッカーは人に向けちゃダメですよ!」
「え、そうなのか!?ワリィ、さん……」
その騒ぎは、最高僧の取り出した一丁の銃により更に増すこととなった。1794 文字

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以前書き途中で投げた、学パロクレミン(と見せかけてクレスとアーチェさんの会話がメイン)です
「クレス~、ミント先輩とはどこまでいったの?」
ニヤリと笑うクラスメイトの何気ない一言で、口に含んでいたスポーツドリンクを盛大に吹き出しそうになり、慌てて飲み込んだ。クラスメイトはむせる僕を横目に、チャームポイントであるポニーテールを揺らしながらねえねえと訊ねてくる。
「……アーチェには関係ないだろ」
「関係あるわよ!なにせあんたたちを引き合わせたのは他でもないこのあたし、アーチェさんなんだから!」
腰に手を当て、えっへんと胸を張るアーチェの堂々とした態度に、思わず頭を抱えた。確かにそうだ、僕とミントが出会うきっかけを作ったのは彼女なのだ。そう言われてしまうと言葉に詰まってしまうのだった。
「で、実際どこまでいったのよ?……まさかまだちゅーもしてないわけ?」
「ちゅ、ちゅーなんてできるわけないだろ!大体、手を繋いだことも無いのに……!」
「え~マジ!?クレス、あんたいつか逃げられるよ。ミント先輩はもうすぐ卒業だってのに」
そういえば、と窓のほうを見つめる。校舎の傍に植えてある木には葉一枚残っておらず、冷たい風が細い枝を揺らしている。冬の訪れを感じさせる季節になっていた。僕たちは2年生、ミントは3年生だ。あっという間に別れの季節はやって来て離ればなれになってしまうだろう。

僕とミントは一応恋人同士として付き合っていることになっている。けれど、僕からは大したアクションを起こさずここまで来てしまった。普通は男から攻めるものよ、とアーチェにはよく言われているが、そう言われた日にミントと顔を合わせると思考が渦を巻いてしまい、顔が熱くなって結局何もできないのがオチだった。
ミントはというと、僕が剣道の練習に励んでいるときに、おいしい差し入れを持ってきてくれることがあった。時折、ミントのほうから一緒に帰らないかと誘われたこともある。行動の起源のほとんどはミントだった。僕は何もしていない。ミントに限ってそんなことはないだろうと言い聞かせてきたが、アーチェの言う通り、このままでは卒業後の進路で素敵な人と結ばれてしまうのは間違いないだろう。

「……クレス、クレスってば」
「!な、なに」
「そこまで考え込むならもっと早くから行動しなさいよね、全く。……でもそんなクレスくんに朗報です!ささ、このチラシを見て」
アーチェが取り出したのはとあるイベントの広告だった。開催日は12月25日、内容は『街なかに建てられた大きなクリスマスツリーのもとで盛り上がりましょう』『夜にはイルミネーションも点灯します』とのことだ。広告にはきらびやかなツリーのもとに集う人々の絵が描かれていた。
「よく少女漫画に出てくるシチュエーションだからありきたりでつまんないなーって思ってたんだけど、二人が行くなら話は別かな。ほら、誘っておいで!」
つまらないも面白いもなにも、僕らはエンターテインメントの一種じゃないんだぞと言いかけた時には背中を押されていた。



 早いもので、クリスマスはすぐにやって来た。あの日「誘ってくるまで教室に入れないからな」とアーチェに言われてしまった僕は、仕方なくミントの在籍するクラスに向かった。そして教室でおしゃべりを楽しんでいたミントに声を掛け、約束をつけた。きっとあの時の僕は、顔から湯気が出るのではないかと思わせるくらい真っ赤になっていたことだろう。
「ごめん!お待たせ」
「クレスさん、こんにちは」
待ち合わせ場所に着くと、ミントが待っていた。母さんに服装や持ち物などを細かく指摘され、チェックしているうちに待ち合わせ時間ギリギリになってしまった。ミントのことだから、遅くとも15分前にはここにいただろう。彼女を待たせてしまった申し訳なさから、素直に詫びる。
「謝らないで。私もさっき来たばかりですから」
僕はミントに対して、いつも「ごめん」と言っている気がする。ミントの寛容さにただただ頭が上がらないだけなのだが、実際彼女自身はどう思っているのだろうか。この癖も治したほうがいいのかもしれない。
「さあ、行きましょう」
そして今日も、引っ張ってくれるのはミントなのだった。1702 文字