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あずきぱん

@azuki_fff_pan

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あずきぱん

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🎈誕
🌟の仕掛けたゲームに奔走する🎈の話

お時間のある方はぜひ、最後まで読み終わった後もう一度タイトルに戻ってみてください。
(お時間ある方だけで大丈夫です)

4-17゛、5-18、2-10、4-10、3-4、3-23、4-29、4-24、4-29、2-9「神代ー」

ホームルームが終わり、帰りの準備をしていると、クラスメイトが何やら手に持った封筒をひらひらと揺らしながら近付いてきた。

「なんだい?」
「これ、天馬が神代に渡しといてくれって」

何だろう。わざわざ第三者を通さなくても、用があるなら直接言いに来ればいいのに。
そんなことを考えながら、受け取った封筒を開ける。中に入っていた手紙を広げ、類は首を傾げる。

『第1問、神代類と天馬司が初めて会話を交わした場所はどこか』

「これは……クイズかな?」

便箋の中心にたった一文だけ書かれた問い。
答えは屋上だ。
行動の前に頭を使い、効率的に動く類に反し、考えるよりもまず行動する、行動しながら考える。そんな司に興味を引かれた。そこから、すべてが始まったんだっけ。

だが、クイズに答えた後はどうすればいいのだろう。司が何を意図してこの手紙をクラスメイトに預けたのか。しばし考えた類は、バッグを肩にかけて教室を出た。昇降口には向かわず、階段を昇る。
意図は見えないが、恐らく屋上に来いと言いたいのだろう。

フェンスに寄りかかり、笑顔で類を迎える司を想像しながら屋上に続く扉を開ける。
しかし、そこには司の姿はおろか、人影ひとつ見当たらなかった。

ふわ、と風が髪を撫でる。
つい先日まで、屋上や中庭で過ごすのは寒いと思っていたのに、もうカーディガンを羽織っていると暑いくらいだ。いつの間にか、夏が近付いているのだと自覚する。
と。
フェンスに紙が挟まっているのに気付いた。近付いてみると、先程受け取ったものと同じデザインの封筒に『第2問』と書いてあった。筆跡は同じく司のもの。
手に取って広げると、また1行だけのシンプルな問題が綴られていた。

『第2問、神代類が5分前にいた場所はどこでしょう?』

「……教室に戻れってことかな」

司が何を考えているのかは分からないが、とりあえず彼の指示通りに行動してみよう。
問題の書かれた便箋をバッグにしまい教室へ戻ると、先程封筒を持ってきたクラスメイトが友人達と楽しそうに話をしていた。

「おー、来た来た。はい、3問目」

彼は類に気づいて顔を上げると、また封筒を差し出した。

「さっき一緒に渡してくれれば良かったのに」
「いっぺんに渡すなって天馬に頼まれたんだよ」

クラスメイトと会話を交わしながら、3問目と書かれた封筒を受け取る。周りにいたクラスメイト達は何やら楽しそうに類を見やった。

「何?今日は神代が天馬に振り回されてんの?」
「いつもは僕が司くんを振り回しているみたいな言い方をするね」
「そうじゃん」
「ひどいなぁ。そんなんじゃないのに」

ただ演出について話し合って、新しい装置の実験なんかをして、時々それが失敗するというだけなのだが、周りにはそんなふうに見えているのか。

「あ、つーか。神代、今日誕生日なんだって?天馬から聞いたぞ」

ふと、1人が思い出したように話題を振る。周りもそれに便乗した。

「は?まじか。言ってくれればラムネ大量に買ってきたのに」
「いや、誕プレが大量のラムネって。逆に嫌がらせだろ」
「えー、そんなことねぇって。嬉しいよな、神代?」
「そうだねぇ。僕はどちらかと言うと、実験のサンプルになってくれる方が嬉しいけど」
「絶対やらねぇ!怖ぇわ!」

放課後の教室に笑い声が響く。
こんなふうに他人と冗談を言い合えるようになったのは、いつからだったっけ。

「なんつーかさ。お前、変わったよな」
「え?」

一通り笑った後、クラスメイトはぽつりと呟くように言った。

「丸くなった?って言うか……うまく言えないけど。前はもっと、怪しい感じの変な奴だったじゃん」
「今も変人だけどな」
「まーあれだ。いい意味での変人ってことだな!」
「なんだそれ、意味わかんねー!」

他愛ない話題で、友人達はけらけらと笑う。
以前は、こういう空気が理解出来なかった。
何が面白いのか分からなくて、けれどそれを素直に聞いたら、場の空気を壊してしまうから。
触れないように、近付かないようにしてきた。
そんな彼らと、今は普通に会話が出来ている。
こうしてクラスに馴染めたのも、全部。

「……ごめん。僕、もう行かないと。次の問題を解かないといけないし」
「ん?おー、またなー」

彼らにことわり、類は教室を出る。そうして手に持っていた封筒を開けた。
きっと、この問題の先に彼がいる。早く全問正解して、会いに行かなければ。

『第3問、天馬司にとって神代類が最も格好よく見える瞬間は?』

「これは……」

司の感覚だ。類が断言出来るものではない。
だが、何となく想像をつけることは出来る。
恐らくあそこだろう、と類は学校をあとにした。


***


「やっぱり」

ワンダーステージの前にたどり着いた類は、思わず笑みを零した。ステージの中心には、いつかのショーで使ったゾンビロボットが置かれていた。ロボットが手紙を差し出すように、延ばした手に封筒が挟まっている。
類は封筒を手に取り、ゾンビロボットをそっと撫でた。

ここで司が意識を失った時は、心臓が止まるかと思った。目を閉じて動かない彼が、もう二度と目を覚まさないような気がして。あのままいなくなってしまうような気がして、怖くなった。
だが彼はちゃんと目を覚ましたし、立ち止まりかけた類の手を引っ張ってくれた。
思えばあの時から、もう司のことが好きだったように思う。

「最も格好よく見える瞬間、ね」

それは類も同じ。ステージの上に立つ司はきらきらと輝いて、まるで本物の王子様と錯覚することもある。
ベタ惚れなのは、どうやらお互い様のようだ。

「さて。ここにも司くんはいないようだし、次の場所に行こうか」

ふ、と息を吐き、類は次の封筒を開ける。

『第4問、天馬司が神代類に想いを伝えた日、背中を押してくれた人物の名前は?』

今度は場所ではなく人の指定か。
しかし、これは考えずとも分かる。類もそうだった。
類はスマートフォンを取り出し、ミュージックアプリを開いた。
一瞬目の前が白くなり、光が散るように視界がクリアになる。

「やぁ、待っていたよ。類くん」

目当ての人物は類の背後に立っていた。
清涼感のある声で来客を迎え入れる。

「カイトさん。司くんから預かっているものはあるかい?」
「もちろん。それを渡すためにここで待っていたんだ」

カイトはそう言って、類の手に封筒を乗せた。見慣れてきたシンプルなデザインの封筒には、案の定『第5問』と書かれている。

「ミク達が類くんの誕生日を祝いたがっていたよ。良かったら、後で司くんと一緒に来て欲しいな」
「あぁ。ぜひ行かせてもらうよ。ただ、いつ司くんと合流できるかはまだ分からないんだ。
この問題があと何問あるのかも把握出来ていないしね」
「焦らなくてもいいさ。何も日付が変わるまで会えないと言うことはないだろう?」
「どうだろうね。もしかして僕、避けられていたりして」

冗談のつもりで言ったが、意外にもカイトは真剣な顔をしてふむ、と顎をさすった。

「それはないんじゃないかな。類くんのお祝いをするために色々考えているようだったし、むしろ類くんしか見えていないように見えたよ」

おっと、これは言ってはいけなかったかな、とカイトは慌てて口を塞ぐ。
カイトの前で、どうしたら類が喜ぶか、ああでもない、こうでもないと思案する司の姿が思い浮かぶ。何だか可愛らしくて、思わず笑ってしまった。

「というか、あと何問残っているか分からないなら急いだ方がいいんじゃないかな。日が長くなったとは言え、そろそろ暗くなって来る頃だろう?」

カイトに促され、それもそうだと我に返る。彼から受け取った封筒を広げ、次の問題に取り組んだ。

『第5問、天馬司が神代類の全てを知りたいと思った場所は?』

ふむ、と顎をさする類。
一番の問題は、主語が天馬司であるということだ。
類自身ならまだしも、司の心が主役となると問題のレベルは一気に跳ね上がる。
顔に出やすいタイプだとは思うが、彼の心を見透かしている訳ではないのだ。
そもそも、全てというのは一体どこからどこまでを指すのだろう。
思考回路。過去。プライベートな時間の過ごし方。
頭のてっぺんからつま先まで。
やはり司の心が動いた瞬間なんて、司にしか。

「……心が、動いた瞬間」

類の脳裏に候補となる場所が1つ浮かんだ。
あの場所で合っているのだろうか。いや、しかしさすがにそれは。だってそこは、司の独断で入ることは出来なくて。だがもしかしたら。
そのうち考えているのも億劫になってくる。とりあえず行ってみよう。違ったらまた考え直せばいい。

「じゃあカイトさん。そろそろ行くよ」
「あぁ。気をつけてね。またあとで」
「またあとで」

カイトに別れを告げ、類はスマートフォンの画面をタップする。再びワンダーステージの前に戻っていた。

太陽は既に傾き始めている。カイトの言う通り、急いだ方が良さそうだ。
類はゾンビロボットを舞台裏へ戻すと、フェニックスワンダーランドを後にした。
僅かに駆け気味で歩き慣れた道を辿る。そうして、類は自宅へと到着した。

司の付き合い始めてから数週間。デートも何度かしたし、キスもした。そろそろかとタイミングを見計らって、彼を誘った。
司の言う“全て”が初夜を指すなら、答えは類の部屋だ。
念の為郵便受けを覗いて見る。
いつも通り親宛ての手紙が数通と電気代の領収書は入っていたが、類宛ての封筒は見当たらない。
類は郵便の束を片手に玄関の前へ立つ。ドアノブに鍵を差し込み、あれ、と呟いた。
珍しいことに、家の鍵は開いていた。
両親は共働きで、この時間は家にいないはずなのに。出勤の際に鍵をかけ忘れたのだろうか。
それとも本当に司が不法侵入を。
いや、彼に限ってそんなことはしないと断言出来る。
きっと問題の答えを間違えたんだ。郵便を置いて出直そう。
そう考えながら家の中に入った類は再び首を傾げる。
玄関には使い込まれたパンプスが1足並べてあった。母親のものだ。
何かあったのだろうかと思案していると、リビングから母が顔を覗かせた。

「類、帰ったの?」
「うん。ただいま」
「おかえり」

軽く挨拶を交わし、類は家へ上がる。
母は忙しい人だから、こんな時間に家にいるなんて、何だか妙な気分だ。

「あ、郵便取ってきてくれたの。ありがとう」
「仕事は?」

郵便を渡し、類は母に続いてリビングへ入る。微かに甘い匂いが鼻をついた。

「息子の誕生日だもの。今日のノルマ、半日で終わらせて来ちゃった」

どうやら類のために半休を取ってくれたらしい。
高校生にもなって恥ずかしいやら嬉しいやらで、らしくなく視線が泳ぐ。

「でもねぇ。余計なお世話だったみたいね」
「は?」

何で、と言いかけた類の目の前に、すっと例の封筒が差し出された。
なるほど、そういうことか。

「司くんからお届け物。『最終問題』だそうよ」
「ありがとう」

これで最後か。何だかほっとしたような、寂しいような、もっと続けていたいような、不思議な気分に陥った。

「司くんって会うのは初めてだったけど、なかなか礼儀の正しい子ね」
「……そうだね。人当たりはいいと思う」

そうか。いつも話はするけど、会ったことは無かったんだっけ。
それもそうか。類が、親のいない時間帯を縫って連れ込んでいるのだから。
今度は両親がいる時に、家で食事にでも誘ってみようか。きっと彼は喜ぶだろうな。
彼のことを考えていたせいか、無意識のうちに頬が緩んでいた。

「ね、類。学校、楽しい?」
「ん?」

唐突に母が切り出す。急にどうしたと言うのだろう。不思議に思いながらも、類はこくんと頷いた。

「まぁ、それなりには楽しいと思うよ」
「そう。良かった」
「どうして急にそんなことを聞くんだい?」
「んー?だって類、前の学校にいた頃は人生つまんない、みたいな顔をしていたでしょ?
それがここ最近は、年相応の顔をしてるなぁって思って。転校して正解だったかもね」

母は、嬉しそうに語る。彼女からはそんなふうに見えていたのか。
けど。違うよ、母さん。
相変わらず授業はつまらないし、体育は怠いし、教師や風紀委員は神経質で面倒くさい。
それでも、そんな学校を多少楽しいと思えるようになったのは。

「類が楽しそうにしてるのは、司くんのおかげかな?」
「……うん。そうだね」

何だろう。
胸がほかほかと暖かくなって、しかしどこかで寂しくも感じて。
早く司に会いたくなった。
衝動に駆られるように、類は封筒を開く。
そこに書かれていたのは、今までのようなクイズではなかった。

『第6問

2a-1、1-21、4-29、3a-2、5-8、4-15?

2-15、2-10、3-19、2-13、1-5、3-2、5-3、4-28、2-9、4-13、1-6、5-10゛』

「これは……」

数字の羅列。2箇所にアルファベットのaが混ざっている。何かの暗号だろうか。
これはなかなかの難問。
しばし数字を眺めていた類は、ふとある法則を見つけた。
数字は全てバラバラなように見えるが、ペアになった数字の前半はどれも1~5まで。対して後半は1~29まである。
5という数字でピンと来た類は、バッグに乱雑に入れておいた、これまでの問題が書かれた手紙を取り出した。
そう言えば、問題を解いている途中で違和感を感じたのだ。急に語尾が変わったり、場所ではなく名前を答えさせたり。つまり、そうしなければいけない理由があったのだろう。

ここに来るまでに出題された5問のクイズをテーブルの上に並べる。
そして1つ1つ確かめながら、空白部分に答えを書き込んでいく。

2a-1。aはおそらくanswerだ。第2問の答え『教室』の1文字目、『教』。
第1問の21文字目、『は』
第4問の29文字目、『名』

文字を拾い出し、順番に並べていく。
最後に書かれた『5-10』の右上についた2つの点は濁点だろう。
類の手元に、1つの文章が浮かび上がった。

『教は名んの日?(今日は何の日?)』
『こたえは天馬司のいえまで』

問題を解き終わった類はシャープペンをテーブルに投げ出し、立ち上がる。

「ちょっと出かけてくる」
「あ、ちょっと待って」

一刻も早く司に会いに行って、答えを伝えたいのに。
母は焦り気味に玄関へ向かおうとする類を止めた。
マイペースな足取りでキッチンへ向かうと、ケーキ箱を片手に戻って来た。

「これ、持って行ってみんなで食べなさい」
「ケーキ、作ってくれたの?」
「えぇ。お祝いしようと思って。でも、どうせ今日帰って来ないんでしょ」

母は見透かしたように言う。正直そこまで考えていなかったが、可能性は拭えない。類はふむ、と考える。

「着替え、持って行こうかな」
「そうしなさい。司くんのご家族に迷惑かけないようにね」
「うん。母さん」
「ん?」
「……ありがとう」

産んでくれて、と心の中で言葉が続いたが、それは恥ずかしさが勝って口には出せなかった。
類は逃げるように部屋へ向かい、バッグに最小限の荷物を詰め込んだ。
ついでに制服から私服に着替え、再び玄関へ足を向ける。
下駄箱にはめ込まれた姿見で服を確認する。よく寧々に私服がダサいと言われるが、今日は大丈夫だろうか。

「大丈夫!かっこいいよ」

母からお墨付きを貰い、類はふっと笑みを零した。

「行ってきます」
「行ってらっしゃい。司くんとご家族によろしく言っておいてね」
「うん」

ケーキを受け取り、家を出る。無意識に天馬家へと向かう足取りは早くなっていった。


***


ようやく司の家へ辿りつく。距離はいつもと変わらないのに、今日は何故かとてつもなく長い道のりに感じた。
珍しく緊張しているのか、無意識に深呼吸をする。
鼓動が落ち着くのを待ち、類はインターフォンを押した。
程なくして、玄関の扉を1枚隔てた向こう側に人の気配を感じる。

「おぉ、類。よく辿り着いたな!それで、」
「答えは」

扉が開き、司の顔が見えた瞬間、胸の中で何かが弾けた気がした。
やっと会えた。本当はセカイに行った辺りで挫けかけたのだ。このまま永遠に問題ばかりが続いていって、もう司に会えなくなってしまうような、言いようのない寂しさに襲われた。
だが、会えた。最終問題の答えを伝えたら、このゲームは終わる。

「答えは……君が今までで1番僕のことを考えてくれた日」
「はは……正解」

衝動的に、司を抱きしめる。ケーキを持っているおかげで片手でしか抱きしめられないのがもどかしい。

「まったく……随分と手の込んだことをするね。おかげで振り回されたよ。
もしも僕がここへ辿り着けなかったとしたら、どうするつもりだったんだい?」
「別に難しい問題でもなかっただろう?オレは、オレの恋人なら解ける問題しか出ていないぞ」
「そう?最後の2問は難問だったように感じたけど」
「でも、辿り着けたではないか。さすがオレの恋人だな!」

司はいつもの調子でにかっと笑って見せる。
散々振り回してくれたことに文句のひとつでも言ってやろうと思っていたのに、この笑顔で気が削がれてしまった。

「つまり僕は試されたってことかな」
「たまにはいいだろう?フェニランで時々開催される謎解きゲームみたいで」
「まぁ、1度くらいなら。だけどぜひ、次回はなしの方向でお願いするよ」

これは思った以上に、体力と精神力を持っていかれるから。

もう少しだけ司の温もりを堪能していたかったのだが、司はさりげなく類から体を離した。

「ところで類、その箱は何だ?」
「あぁ、これ。母さんがケーキを作ってくれたんだ。みんなで食べなさいって」
「おぉ、手作りのケーキか!それならセカイへ持って行ってみんなでいただくとするか」
「そうだね。ミクくん達も待っていてくれるようだし、さっそく、」

移動しようか、とスマートフォンを取り出した手は、司にそっと止められた。

「そ、そんなに慌てなくてもいいだろう。いつでもいいと言っていたんだし」
「司くん……?」
「す……少しくらい、ゆっくりしていったらどうだ……準備のせいで全然会えなかったから、オレだって……その、少し、寂しかった、し」

彼にしては珍しく、語尾に向かうに連れて声が小さくなっていく。最後の方はついに聞こえなくなってしまった。
あぁ、もう。
そんな顔をするから。愛しさが込み上げて、胸いっぱいに広がって。
気持ちを抑える事が出来なくなった類は、ほとんど強引に司を玄関の中へ押し込んだ。
ホールの床にケーキを置き、流れるように司を押し倒す。

「念の為聞いておくけど、家に人は?」
「咲希は一歌の家に泊まりで……両親も親戚の家に行っているから、今日は帰って来ない」
「そう。それなら良かった」
「ち、ちょっと待て……!こんな所で……っ」
「司くんが煽ったんだよ」
「料理……!料理、冷めるから……!」

顔を真っ赤に染め、じたばたと抵抗する司。
このまま押さえ込むことは簡単だったが、類はふむ、と動きを止めた。
きっと類が奔走している間に急いで帰宅して、用意してくれていたのだろう。
彼の料理を無下にすることだけは避けたい。
仕方なく、類は司に触れるだけのキスを落として体を起こした。

「今はこれだけで我慢しておくよ」
「う、む……」

司は口元を隠し、逃げるようにキッチンへ向かう。
そんな彼をもう少しだけ見ていたくて、引き止めた。

「司くん。僕からも問題を出していいかい?」
「うん?」
「……第7問。

天馬司は、この先もずっと神代類の隣にいてくれる?」



3問目。

天馬司にとって神代類が最も格好よく見える瞬間は。
答えは『ワンダーステージの上』だった。
そしてそれは類が司に対しても言えることだと思ったのだが。

「愚問だな」

類にとって司が最も格好よく見える瞬間は、今かもしれない。
目を細め、色気の滲む笑みを見せた司に、類は漠然とそう感じた。


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