リプ来たセリフでSS書く第三段エクスターミネーションを終え、地獄もようやく落ち着いてきた頃。
ホテルの前に子供が落ちていた。
意識のないその子供をチャーリーがホテルに連れ帰り、目が覚めるのを待っていた。
すぐにぱちりと目を覚ました子供は金色の瞳に茶色い髪。
小さな金色の羽。
その特徴の人物に心当たりがありすぎたホテルの面々はこの子をどうするかの大騒ぎ。
捨てる?捨てない?誰が面倒を見る?
など議題は尽きなかった。
本人は泣くことも無くニフティと共に虫で遊んでいた。
「仕方ないわ、パパに頼みましょう」
エクスターミネーション後、ホテルに別荘用意した地獄の王ルシファーをチャーリーは呼びつけた。
「チャーリー!どうしたんだい?…………まて。この子は…………」
「ええ、パパ………」
「ダメだ、言うな、絶対面倒だ」
「アダムよ」
アダムと思われる子供を抱き抱えルシファーの前に差し出す。
ルシファーは目を手で覆い、神よ、と天を仰いでいた。
「どうしてこうなったんだ?」
「私にも解らないわ。でも…この子をこのまま外に放置することも出来ないし…そもそも大人の時の記憶があるのかも分からない…」
つんつん、と丸いほっぺをつつくときゃらきゃらと笑う。
「あぅー」
「言葉も話せないような子をもし記憶があったとしてもそのまま放置することは私には出来なくて…」
「…そうだな。うん、確かにそうだ、本当に優しい子に育ってくれたね、チャーリー。この子は私が面倒を見よう。もし元に戻ったとしても私であれば対処出来るしな」
「パパ…!」
おいで、とチャーリーからアダムを受け取る。
大人の時のような憎たらしい表情は一切なく、キラキラとした金色の瞳を大きく開けてルシファーを見た。
「きゃぅー!」
「どうした、私の顔が面白い?」
ぷぷぷぷぷと口で音を立てアダムの機嫌をとる。
「さすがパパね。慣れているわ」
「もちろん、君が小さい時もよくこうして遊んだものだよ」
「あう」
「どうした?お腹がすいたのかい?帰ろうか。ではチャーリー、また何かあったら呼んでおくれ」
「ありがとう、パパ」
***
部屋に戻ると魔法でベビーチェアを出す。
そこにアダムを座らせりんごのすりおろしを作って口に運ぶ。
「んま、んぅ」
「うん、美味しいか。よかったよかった」
甘酸っぱいりんごを小さな口でまむまむと食べる姿に昔のチャーリーの記憶と重なる。
「小さいお前は、こんなに可愛かったんだな…」
そもそもアダムに幼少期はない。
生まれた時から成人で産めよ増やせよ地に満ちよと主より子孫繁栄を求められた存在。
幼少期というものはアダムには不要とされ、そのようには作られていないのだ。
それがどうして。
失われた幼少期を取り戻すために地獄で子どもの姿に転生したと言うのか。
せめて、人間から天使になった時にそのような過程を経ればいいものを。
人間の時は楽園を追われ、天国に行っても熾天使の小間使い。
果ては、記憶を失い子どもの姿となって地獄へ堕ちた。
「天国にいた時、お前は本当に幸せだったのか?」
こんなことをこの子に言ったところで何の解決にもならないと言うのに。
こてんと首を傾げるアダムの頭を撫でてやる。
にこにこと笑うアダムに毒気が抜かれた。
「仕方ない。今日から私がお前のお父さんだ。存分に甘えなさい」
「うー?」
「とりあえず、明日は着るものを探そう。食べるものもりんごだけではいけない、もっと栄養の取れるものを」
りんごを口の周りに沢山つけたアダムの口を拭い抱き上げる。
ぱたぱたと小さく羽ばたく羽はまだこの子を空に導くには小さすぎる。
とんとん、と背中を叩いてやるとけぷりとゲップをする。
おっとこれは乳飲み子がする事だっただろうか。
まぁいい、健やかなれ。
***
ルシファーのアダムへの溺愛っぷりはチャーリーをも引くほどだった。
可愛く着飾ったアダムを必ず視界の中に入れて生活をする日々。
この地獄でできるだけ綺麗なものだけを与えるルシファーに少しの悪戯心が働いたエンジェルがアダムに玩具を与えた。
「誰だ、アダムにこんな悪趣味なものを与えたのは」
グロテスクなぬいぐるみがアダムの手に握られていた。
本人は楽しそうに笑いながらぬいぐるみと遊んでいる。
投げると内臓が飛び出す謎仕様になっておりそれが意外にもアダムに受けている。
「えー?アダムが楽しそうにしてるからいいじゃん」
「だめだ、教育に悪い」
「この地獄でそんなの守り切れるー?」
「守りきってみせるさ、この子がこれ以上間違わないように、苦しまないように」
ぬいぐるみを取り上げかわいいクマのぬいぐるみにすげ替える。
少し不満そうにしていたが、またぬいぐるみであそび始めた。
「呆れた、この地獄でそんな綺麗事出来るわけないじゃん」
「私が育てるんだ。それくらい出来なくて地獄の王は務まらない」
至極当然と言ったように言ってのけるとエンジェルはあっそ、と興味をなくしたようにロビーを去っていった。
「アダム。お前はここで健やかに暮らそう、天使の時とは違った、未来になるように」
ちゅ、とアダムにキスをするとアダムは嬉しそうに笑った。
END