すき焼き 敦と太宰は日用品の買い出しに出ている。
太宰が台所用品の売り場を見回しながら歩いている。と、目に留まったそれに思わず感嘆の声をもらす。
「あ、これいいな~。ねえ敦君、これ買おう?」
「なんですか?」
敦はカートを押しながら後ろからついてきた。太宰が嬉しそうな顔で指差すのは、底が浅めの平たい鍋だ。
「すき焼き用の鍋。
ほら、私って今まで一人暮らしだったから、鍋なんてなかなか出来なくてさあ」
「いいですね。僕も鍋とかそういう料理ほとんど食べたことなくて」
ふたりとも納得して鍋を買うと、家路を辿った。
帰り道に、敦がなにか云いたげにしているのに気づくと、太宰はその頬をつつく。
「どうしたんだい?」
「いえ……買っちゃったのはいいんですけど、すき焼きってどんな食べ物ですか?」
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