6月某日 新東京市内ビジネスホテル504AM5:35

半端に開いたカーテンから朝日が差し込み、セミダブルベッドに柔らかい光を落とす。

横になっていた女は目を細める。
身動ぎすれば、白いシーツに巣を張っていたウェーブの金髪がするすると動き、少し汗ばんだ首に纏わりつく。
布が擦れる音。女は裸だ。

仕切りを隔てた向こうから、蛇口を捻る音が聞こえてくる。

「朝から忙しいのね、支部長様は。」

女が寝返りを打ちながら声を掛ける。

隣で寝ていたはずの"支部長様"は、洗面所を後にすると白いワイシャツに腕を通しながらベッドの方を一瞥した。
華奢な指先が手早くボタンをかけていく。
「すぐにでも片付けたい案件が山積みなんです。」
裾をスラックスにしまい込む。

なんでバスコさんのタバコが嫌かって書いてなかったか……幼少のあの姿は、大切な親からの言霊をただ守って貫いただけだからなんだよ。
お母さんがクズつったからクズなんだよ。それだけ。

暴れそうになった時、翔瑠さんの制御だけがなんで彼に届くかわかりますか？

甘えてるだけじゃないよ。信頼もそうだし、親くらい大切な人の忠告だから、聞くんだよ。

なんだそれ？って感じでしょ。だけどね。真っ直ぐで融通効かなくても、大切な人の言葉は聞き逃さないんだよ。直感は揺るがないから。機械弱くても嗅覚で仁さんをたったひとりでボコリに行ったでしょ。猪突猛進でありながら"見"でいるその心。

俺はワルだって言ってたけど、悪とクズは似て非なる者だから、クズに自ら成り下がる事が吐くくらい嫌だって話。