ココイヌデート①「デートしようぜ、ココ」
そう言って、幼馴染が指定したのは、チェーン店のドーナツショップだった。
チームの幹部が昼の三時にドーナツショップでデート。健全すぎて、逆に新鮮だ。さすがオレのイヌピー。ぶっとんでいる。
待ち合わせの十分前にドーナツショップに到着すれば、イヌピーはすでに窓際の席で待っていた。遅刻魔のイヌピーが珍しい。それにしても。
「目立つな」
どこで見つけてきたんだか、ド派手なピンクのジャージに、オレがプレゼントしたルブタンのハイヒール。まるでセレブの休日のピンナップのようで、妙な迫力がある。
値段も質も雲泥の差のジャージとハイヒールを合せようなんて思うのは、イヌピーだけだろう。しかも行先はドーナッツショップ。窓際の席で、つまらなそうな顔をして、カフェオレを持て余している。あまりにイヌピーらしくて笑ってしまう。
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