草冠「これより、卒業試験を始める」
曇り空の朝、教官の声が響く。今日は運命の日。今までの努力が実を結ぶか水泡に帰すか、そのどちらかが決まる。イチかゼロかの勝負に橿原は怯えていた。勝つか負けるかなど、とうに慣れている筈だ。彼女は卓球部の試合でそれを何度も味わっている。しかしそれとは訳が違う。趣味の試合とは別の、自分の将来がかかっているからだ。
アカデミーに入学できる人数はほんのひと握りで、AからDクラスまであるが、全体の人数は高校の一クラスも満たない数であった。そんな手で数え切れる他の生徒達も橿原と同じく、アカデミーのグラウンドの空気は張りつめていた。またそれとは別に、橿原はもう一つ別のプレッシャーを抱えている。
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