マンゴープリン柳楽凌は予備校のビルを出るとぐいと伸びをした。日は陰りかけており、頬に当たる当たる風が冷たい。季節はもう秋が終わろうとしていた。もうすぐ冬が来る、つまりは受験の季節。灰色の浪人生活が終わるまでもう少し…となるには自分自身の不断の努力が必要なのだが。
「あれっ柳楽さん!?」
声のした方を見る。そこには橘知里佳が居た。マンションからも大学からも遠いというに、珍しい。柳楽は偶然現れた恋人の存在に胸が高鳴った。
「橘さん、どうしたの?」
「偶然ですね。近くで友達とお茶してて…。えっと、本当はちょっと期待してたんだけど。柳楽さんの予備校、ここって知ってたから…」
知里佳はえへへとにやけるように笑う。可愛い。攫ってしまいたい。自分に偶然会えたというだけでこんなにも幸せそうに笑うこの子が愛おしくて可愛くて仕方がない。柳楽の頬も自然と緩む。
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