探し回るも悟天の気配はない、僕には感じることができなかった。
父さんなら、直ぐにでもわかるはずなのに。
空を飛び森や林に原っぱに湖に知っているところを集中探していく、でも気の流れの気配がわからない。
海?と考えるも、悟天に限って飛び込むなんて。
「もう一度。」
「悟飯さーん。」
遠くの方でトランクスの声が聞こえる。
「トランクス••••」
「悟天の携帯電話で探しに来たのですが、同じ先に悟飯さんの気配も感じまして。」
僕も疲れてはいた、声でトランクスと認識するなんて、あのキャンプで悟天は身の回りのものを持っていかなかった、だから僕が悟天の携帯電話も持っている。
地上に降り立つと疲れで膝をつく、こんなに体力も落ちてるなんて。
「いったん帰りましょう。オレもママに頼んで探してもらいますから。」
「大丈夫だよ、うちの問題だから。僕が探さなきゃさ、だって僕は悟天の兄ちゃんだ、いつだって兄ちゃんを待ってるんだから。」
それから気がつくと、どこかの場所で白い天井があった。
右側に点滴で500mlも入れられて、ぽとぽとと秒より少し早いペースで落ちている。
左側の椅子に座ってベッドに寝ているビーデルさんがいた。
「ビーデルさん?」
「ん?悟飯くん、よかった目が覚めて。」
「僕、疲れて、倒れちゃいましたかね?」
「本当に、無理しないで!悟天くんのことはみんなで探しているから。」
「ははは。」
「ひとりで抱え込まないでね。」
悟天は、ひとりで抱え込んでいるから••••
僕のことより悟天を優先してほしい。
なぜ、僕はピンチに助けられるんだろう、みんな僕より悟天を
「まだ少し点滴するみたいだから、ベッドから動かないほうがいいって。」
「僕の方より、悟天を••••」
「もう少し休んでいてね、自分を大事にしなきゃ悟飯くん。」
部屋のドアの音、入ってきたのはピッコロさん。
少し起き上がると、ビーデルさんも手伝ってくれ、上半身起きる。
「ピッコロさん、そっと来るなんて。」
「悟飯。」
僕の名前を呼んだあと、ピッコロさんのまわりに風が起こったようにパタパタとカーテンがなびく。
「え、ピッコロさん••••え、僕••••」
気配を感じない。
気を感じることができない。
あの時、トランクスの声で気付いて疲れているだけだと思っていたのに
でも違う、
ビーデルさんの顔を見て、ピッコロさんの顔を見て、
僕は右腕の針を抜いた
「悟飯くん!」
と同時に、近くの窓を破る••••
空に舞いあがれるはずなのに、ピッコロさんの長い腕が僕を捕まえていて引き戻された。
「なんで、なんで、なんで、こんなんじゃ悟天を見つけに行くなんてできない、僕、どうして。」
体中に刺さるガラスの破片滲む血、
こんなはずじゃ
こんなことで血が出るなんて
痛みも全身に走る、
うずくまった
ちがう
こんなの
僕じゃない
ちがう!
「悟飯、いざとなればドラゴンボールで探せる、お前が気にすることなどない。」
「嫌だ!そんなのに頼って、今いないのが悟天なんです。兄ちゃんってかわいい声で僕を待ってる。」
幼い悟天が「そこ」にいるんだから、兄ちゃんってどんな時でも、兄ちゃんって僕に甘えてきて。
「悟天は僕がずっと守って来たんだ、僕が守らなくちゃいけない、ごて••••」
ピッコロさんの手が見えたかと思う、僕は•••••
焦げ臭い匂いが漂う、どこかで焚き火をしている?暖かい場所ではあると思う
まだ目を開けられそうにない、頭が重くズキズキしている
口元に何かがあたるので口を開けた
何か口に温かい何かが、入れられてゆっくり飲み込んだ。
「よかった、飲んでくれましたよ。」
何処かしら聞いたことがある声だったけど、それから数回口から飲み物を飲んで眠りに入った。