「邪魔だ、どけ」
強い衝撃があって、突如意識が鮮明になる。鈍く痛む部分を抑えてうずくまったニョンは、横腹を蹴り上げられたのだと廊下の角に消えていくニェンの背中を見て理解した。
こうして彼に一発食らわされて目覚めるのも、もう何度目になるか分からない。というのも、ここ最近のニョンはほとんど朝までベッドで大人しく眠っていることが出来ないみたいだった。今日だって、人形たちと一緒になって廊下に転がっていたらしい。
いわゆる夢遊病というやつではないかと、ご主人様は疑っていらっしゃるそうだ。どこかまだ他人事のように感じている部分があって、例えば、幽霊が眠っている自分を夜な夜などこかに運んでいるのではないかと考えては夜毎ゾッと身を震わせていた。
1994