鶴月SS──これは夢だ。
鶴見は確信していた。時折あることであった。自分はいま眠っていて、夢を見ているのだと自覚することが。
「いいえ、悪夢ですよ」
頭の下に腿を感じた。そして、降りかかる穏やかな低い声と吐息を感じた。瞼の裏に映った男の顔は、真面目くさった表情をしていた。
「何故そんなことを言うんだ、月島」
鶴見は返す。真っ直ぐと自分を覗き込む瞳を愛おしく思いながら。
「お前が出てくる夢が悪夢なものか」
月島は頭を振る。表情は乏しくとも、端々に滲ませる淋しさを鶴見に悟らせまいと、少しだけ目線を横に逸らせていた。
「貴方が私を夢に見るなど、あってはなりません」
「ふふ、お前にとって悪夢なんだな。幸い、私にとっては悪夢ではない」
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