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    ハラミ

    下書きも腐もエロもたくさん載せる練習用の置き場。

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    ハラミ

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    WEBオンリー用の小説です。
    中隊長ズの健全、カプなし、現パロ。ギャグ風味。
    人体発火はないけど能力は使える。ご都合主義。
    ※何でも許せる方向け。

    「パティスリーフレイムの朝は早い」「98、99、ひゃくっ!!!よっしゃ!」

    レッカとフォイェンはノースリーブのウェアを着て店先で筋トレをしている。新緑の季節の早朝まだ肌寒い中、毎日の日課であるランニングにこれから行くところである。レッカは店舗兼事務所兼居宅の二階への階段を駆け上がっていった。

    「カリムー起きろーランニング行くぜ!!」

    「う~眠い……寝かせろ……まだ4時だろ……」

    カリムは布団を被ってもぞもぞと動いている。

    「カーリーム!行くぞ」

    レッカはカリムの布団をはぎ取った。

    「ったくなんで体を鍛えて筋肉をつけなきゃいけねェんだよ…」

    「カリム!バーンズ校長の教えを忘れたのか??あと一分で降りてこいっ!!」

    レッカはバタバタと下へ降りて行った。


    レッカ、カリム、フォイェンは皇国のカリスマパティシエ、バーンズ校長が創設したバーンズ製菓学校で知り合った3人組だ。性格も年齢も製菓の得意分野も違うが、実習で助け合ううちに仲良くなり、一緒に店を出すまでの仲となった。

    バーンズ製菓学校は皇国一の名門ではあるが少々特殊である。最初の数カ月は体を鍛えるハードなトレーニングを行う。製菓のせの字も教えてもらえず、ひたすら腕立て腹筋ランニングで筋肉を仕上げていく。「繊細な菓子は屈強な体から生み出される」という精神の下、バーンズ校長は学生達を千尋の谷に突き落とす。学生たちは期待に胸を膨らませ入学したにも関わらず粉にさえ触らせてもらえないので途中で脱落するものも多い。ただしプロテインの粉は大量に支給されるが。数か月後獅子の谷から這い上がり体を鍛えて別人のように精悍な顔つきになった学生たちは、そこからバーンズ校長直々の製菓技術をスポンジのように吸収していく。そして卒業後は皇国の名だたる洋菓子店に就職していく。3人もそれに続けと入学したが、それぞれ能力に凹凸があったので思うようにはいかなかった。3人で助け合い力を合わせてなんとか卒業できた。2階のカリムの机には、焼け焦げ粉まみれクリームまみれのコックコートを着た3人が肩を組み満面の笑みを浮かべている写真が飾ってある。

    フォイェンは生地作り、カリムはデコレーション、レッカは調味が得意だ。フォイェンはパワーを活かして豪快にこねたり混ぜたりすることができる。また粉の配合や焼き加減の調整も得意で食感を思い通りに操ることができる。しかし、体温が高く指先も熱いのでデコレーションが苦手だ。たまにフルーツを握りつぶしてしまうこともある。
    レッカもパワー系で技術はあるが、分量も焼き時間も適当なためべしょべしょの物体Xを作り出してしまう。しかし食べるのが大好きで舌が肥えており、パティスリーフレイムの調味においての要である。カリムは繊細な細工とデザインが得意で、芸術品のような洋菓子を作る。指先が冷たく、チョコや飴細工はお手の物。卒業制作の立体ヌーカレは若獅子賞を獲得したほどの腕前である。ただこだわりが強く、時間をかけすぎてタイミングを逃すことも多い。


    カリムが1階に降りるとフォイェンは店舗前の花壇の草取りをしていた。フォイェンはカリムに朝の挨拶をし、3人で店舗の看板を眺めた後、日課のランニングを開始した。

    「やっぱり……店名は変えたほうがいいかもしれませんね」

    「あ!あのインフルエンサー!皇国 フレイム で検索すると、スイーツ好きのヒゲのごっついおじさんが一番に出てくるもんな☆フレイルおじさんに検索順位で負けちゃっているぜ~!!情けないぜ!フォイェンのフ!レッカのレ!フォイェンのィ!カリムのム!でぴったりなのにな!」

    「まあそれもそうなんだが……オニャンゴ副校長との契約の約束もあるんだ。店名を変えるなって」

    「オニャンゴ副校長がそうおっしゃるなら…仕方ありませんね」

    「あっ!今日はオニャンゴさんからコニャンゴの誕生日ケーキを頼まれていたぜ!フォイェン、スポンジ生地はどうだ?カリム、デザインもバッチリだよな?」

    「任せてください!」

    「当たり前の完璧だ!」

    性格は違えど、自分たちの力で人を幸せな気持ちにしたいという思いは同じである。3人は製菓の腕を見込まれバーンズ校長の店で修行した後、オニャンゴ副校長のはからいで駅前に店を持てることとなった。

    「急げ!」

    「ったく……風呂場にまで一緒に入らなくていいだろ!ケツが当たっている!」

    3人は時短のため一緒に風呂に入り、シャワーを浴び、第一のバッジのついた帽子をかぶり、青いラインの入ったコックコートを羽織った。フォイェンとレッカは鍛えすぎのためか胸周りがまたパツパツになってきている。

    「まずはバースデーケーキに取りかかるぜ☆俺はクリームを泡立てるぜ☆フォイェンは土台のスポンジを、カリムはデコレーションの準備を!!!」

    「OK!」
    「はい!」

    ガシャガシャと大きな音を立ててレッカが生クリームを泡立て始めた。うおおおおおおと叫びながらボウルを傾けると、隣でフルーツの皮むきの作業をしているカリムの顔面にビチャビチャとかかった。クリームまみれのカリムがギロリとレッカをにらむ。

    「おい……」

    「すまないカリム!!!!でももう泡立てできたぜ☆」

    「爆速で速すぎる……でも美味いな」

    頬にかかったクリームをぺろりと舐めてカリムはつぶやいた。スイーツ作りは筋肉が必要だ。タオルでクリームを拭った後

    「フォイェン、頼む」

    カリムはフォイェンに向かってフルーツを投げ、フォイェンは目にも止まらぬ速さで十字を切った。フルーツが机に置かれたバットにきれいに並んで落ちていく。

    「ははは☆いつ見てもすごいぜ~☆フォイェンが暗殺者とかにならなくてよかったぜ!」

    レッカはベラベラと喋りながらも慣れた手つきでスポンジにクリームを塗り、フルーツを並べていく。

    「私は争いは好みませんので…。さて、スクエア6号三段ですね。このくらいでしょうか。余った部分はトライフルにしましょう」

    フォイェンは指に熱を込め十字を切った。きれいな断面が出たスポンジを3段に重ね、三人でクリームを塗り、フルーツを飾り付けた。カリムはマジパンで作ったコニャンゴの人形を真ん中にのせ、チョコで作ったアルファベットを順番に並べていった。

    「HAPPYHAPPYBIRTHDAYっと……よし完成完了!」

    「カリム、いつも思うんだが一語多くないか?☆」

    「…おまけだ」

    「レッカ、そろそろお米を炊いておいて下さいね」

    「おっと忘れていたぜ☆今日はとびっきりの米だぜ☆」

    レッカが米袋をどんと机に置くと、そこにはでかでかと「バーンズ大隊長ヌーカレ田植え米」と書かれていた。

    「ヌードで田植え…?」

    「カリム、深く考えては負けですよ…」

    フォイェンが苦い顔で言った。

    「この米は単にヌードで作業するだけではなく、田植えをしながら体を隠している貝殻を一つずつ砕いて田んぼに撒いて肥料にしていくんだぜ!ミネラルが供給されて米がとっても美味くなるらしいぜ!!!パフォーマンスと味を両立させたバーンズ校長は爆裂超絶天才だぜ!!!俺も全身から炎を出して焼き菓子を焼いたり、自分より大きな生地の塊を殴って捏ね上げたりしてみたいぜ~☆」

    レッカはバーンズ校長に心酔している。目がキラッキラしている。

    「技術は確か……確かに確かなんだが、思えばなんだか変で妙な学校だったな…」

    学校は教会の大聖堂のように豪華であり、また熱狂的なバーンズ校長のファンもおり、一部の間では宗教のようだとささやかれている。

    「ちなみに米を炊く水はカリムの氷だっぜ!!!」

    フォイェンはふとその水分はカリムの何なのだろうと考えたが、考えるのをやめた。

    「さて、私は夕飯の仕込みでもしましょうかね。いいハーブが育ったんですよ。あと能登君からジャガイモもいただきました」

    「ハーブスパイスのポテトパンだな!!楽しみだぜ☆」

    フォイェンは巨大なボウルに粉を振り、イースト菌や水を合わせ、豪快かつ繊細に混ぜ始めた。そして調理台の大きな板にたたきつけ始めた。ドゴっ、ドゴっと戦闘中のような音が響き渡る。

    「フォイェン~イースト菌がびっくりして死んじゃうぜ~☆」

    「目を覚ましてしっかり仕事をしてもらわなければね。さて、次は一次発酵ですね」

    フォイェンはパン生地を入念にラップに包み、抱っこするかのようにおもむろに懐にしまった。

    「何をやっているんだぜフォイェン!?ついに母性が芽生えたのか!?」

    「……違いますよ。発酵の温度は体温くらいです。そしてこうして胸筋で抱っこしておけばどれくらいふくらんでいるか肌でわかるでしょう?バーンズ校長の教本で見かけたので試してみています」

    聖母マリアのような慈愛に満ちた表情でフォイェンはパン生地を抱きしめた。朝の柔らかい光がフォイェンを照らす。

    「なるほど合理的だぜ!フォイェンがママになっちゃったぜ……☆」

    「今日ボードに描いて試しに売って販売してみるか?一部の層に売れそうじゃないか?フォイェンママパン??フォイェンの胸筋パン?」

    「マニアックすぎるぜカリム!!」

    フォイェンは黄色のティーセットを取り出し、優雅に紅茶を淹れはじめた。

    「今日は中華半島の切れ目付近の特殊な空気で育った茶葉です。飲むと気分が高揚して饒舌になるそうですよ。眉唾ものですが……」

    「本当かフォイェン!確かに気分が上がってきたぜうおおおおおおお!」

    香りを嗅いだレッカが叫んだ。

    「いつもの普段通りだろ……それにまだ飲んでもいねぇだろ……」

    フォイェンは商品に合うお茶を作るのも得意である。屋上の庭園でハーブを育て、オリジナルブレンドに使用している。

    「今日はこれにしましょうかね。香りとふくよかな甘みがよく合います」

    フォイェンは緑の葉っぱで縁取られたクロスのデザインのティーバッグをレジ横に並べた。フォイェンのお茶はお店の主力商品と合うように作られており、レジ横で買う人も多い。自宅で淹れることもできるし、マイボトル持参でお店で淹れていくこともできる。水はカリムの氷を使用している。

    三人は紅茶を楽しんだ後、フォイェンが準備していた残りの材料でケーキを作った。カリムがデザインしたカップにクリームやスポンジ、フルーツをのせ、アラザンをふりかけたチョコレートの星を真ん中に飾り、キラキラのトライフルに。お花の飾り切りをのせたイチゴとクリームチーズのケーキ、フォイェン配合の抹茶パウダーを混ぜ込んだロールケーキなど、瞬く間にケーキが並んだ。

    「先日ボディビル大会で思いついたのも作ってみるぜ!」

    レッカはスポンジを四角に切り、二つ並べ、バタークリームを塗り、小ぶりのチェリーを二つのせた。そしてカリムに準備してもらっていた複数のチョコのプレートをのせた。そこには「キレてるよ!」「大胸筋が歩いてる!」「肩にでっかいマッチボックスのせてんのかい!」などと筋肉を応援する言葉が書かれていた。

    「これは……一体……」

    フォイェンは神妙な顔で覗き込んだ。

    「あの筋肉美はすごかったぜ~☆後で第八洋菓子店に持って行ってアドバイスをもらってくるぜ☆」

    第八洋菓子店はバーンズ校長のお店「パティスリーレオナルド」に次ぐ規模の洋菓子店である。

    「ライバル店だろ……やめとけ」

    レッカはしょんぼりとして冷蔵庫に胸筋ケーキを閉まった。お米の炊ける良いにおいが漂ってきた。

    「よっしゃあ〜!!!おにぎり作るぜ!!!」

    レッカが食材を並べたバットを取り出してきた。以前レッカがメディア露出をした際に、好物を「おにぎり」と公言した。そこからファンや宣伝してほしい生産者から毎日具材が届くようになってしまった。宝石のようないくら、ご飯に合うピリ辛高菜、ジューシーなスパム、香り高いツナなどで毎日おにぎりを握ることができるのだ。

    「パティスリーなんだがな…」

    「そうですね……」

    フォイェンはまんざらでもない顔をしている。

    「ではおにぎり握りに取り掛かる!フォイェンは具材を均等に切ってくれ!レッカは焼き目をつけろ!」

    「「了解!」」

    フォイェンがズバズバと具材を切り、レッカは拳を発火させ炙っていく。それをラートムと言いながら人々の幸福を願って三角に握っていく。レッカは米を1合取り、山盛りの具材をのせ、

    「ラートムゥゥ!!!!」

    と言いながら圧縮した。カリムはピンクに染まった漬物を花の形に細工しておにぎりにのせていった。机には完成したケーキとおにぎりがずらりと並んでいる。

    「よし、商品も朝食もできたぜ☆オープンだ!!!」

    カリムは店の屋上に上がり、時報代わりにトランペットを吹き鳴らした。すると「七」と書かれた纏が西の空から飛んできてカリムの前で止まった。第七甘味処だ。カリムはお代を回収し、準備していた商品と領収書を括り付け、もう一度トランペットを吹くと纏は炎を上げて戻っていった。

    それからさらに西の方角から、

    「ピーピー!ピピピピ!ピピッツピュー!」

    という笛の音が微かに聞こえた。

    「昼前に10個、第四の訓練校に配達してデリバリだな」

    カリムはメモを取り、1階に駆け下りた。シャッターを開けると、女子高生が騒ぎ出した。

    「きゃ~レッカさん♡♡」

    レッカの周りを女子高生が取り囲む。

    「おはようございます!いらっしゃい!!!今日も元気だな!!!いつものだろ?いっぱい焼き菓子をおまけしておくぜ☆」

    「ありがとうございます~今日も顔が良い~♡一緒に写ってください!」

    「いいぜ~!ハッシュタグパティスリーフレイムってつけておくんだぜ☆約束だ!」

    「は~い♡」

    レッカの撮影会が始まってしまった。カリムは注文を聞いて袋詰めし、レッカに渡してレジを通すと同時にファンのはがしも行っている。

    「全く……えげつない人気だな……」

    「そうですね…さすがレッカ…」

    フォイェンはのんびりと常連の相手をしている。女子高生の群れが去り、一息ついたところで見慣れたピンク色がカリムの傍にやってきた。カリムは顔を上げた。

    「来たぞ砂利」

    「げえっ」

    「美しくて賢い私にげえっとはなんだ。お……これは可愛いな。上にピンクの花があしらわれている。シンラとアイリスに買っていこう」

    「これはカリムの案だぜ~!作ったのもカリムだぜ☆可愛いだろ?」

    「砂利がこんな可愛くて繊細なものを…?信じられん」

    プリンセス火華は付近の理系大学院に通う大学院生だ。カリムのことを嫌っているようでしょっちゅう買いにやってくる。火華はカリムに紙幣を投げて渡し、釣りはいらんと高いヒールをコツコツと鳴らしながら雑踏へ消えていった。

    「カリムは絡まれやすいですね。でもおまけはたくさんつけてあげるんですね。ふふふ」

    フォイェンはレジの横に置かれているパンを見つけた。

    「なんですかこれは!?夕飯……」

    と言い終わらないうちに、通勤前の女性会社員がレジ前に群がってきた。

    「なんでなんでなんでなんで!?」

    「フォイェンさんの胸筋で発酵させたパン!?うっ頭おかしくなる!」

    「これは夢!?ついに尖りに尖ったフォイェンさん関連商品が出るなんてぇ」

    目の下のクマがすごい女性が目をかっぴらいてまくし立てた。

    「ええと……試作品ですからここだけの秘密ですよ?……これもおまけでどうぞ。これはおにぎりと合いますよ」

    フォイェンは袋にティーバッグを入れ、唇に人差し指を当て、顔を傾けて微笑んだ。

    「ありがとうございます!!!!!!今日も一日頑張れる!!!行ってきます!!!!」

    皆受け取った瞬間にパンを抱きしめヒールで駅に駆けていった。通勤客の波が落ち着いたころ、ケーキのフレームのサングラス、腕には農家の女性がつけるような花柄のアームカバー、熱血☆と書かれたTシャツにしましまの腹巻、そしてキャップを目深に被った男が店内を見まわしながら入ってきた。キャップにはイチゴのモチーフがたくさんついており「ぱてぃしえ」と書かれている。カリムはこの服装を見た時卒倒しそうになった。ファッションにこだわりのあるカリムとは対極の存在かもしれない。

    「この列を1つずつ、お茶も全種類、焼き菓子も全種類ください」

    「わかったOK」

    近所の商店街を歩いて集めたようなコーデに気を取られわからなかったが、顔をよく見ると第八洋菓子店の副店長だとカリムは気づいた。そこでカリムは厨房の冷蔵庫にしまってあったあのケーキを取り出し、おまけですと袋に入れておいた。あまりにも独創的なケーキに恐れ慄け、と思いながら。

    「ありがとうございます。また買いに行きますね」

    カリムはニッと笑って目を合わせると、火縄副店長も不敵に微笑み、大きな箱を抱えて去っていった。

    カリムがお客さんの第三の波を捌き、レジ横で座って休憩していると、入り口に異様な殺気を感じた。そちらに目をやると、スーツに黒ネクタイの細身の男が立っていた。明らかに他のとは異なる雰囲気にカリムは思わず目を反らした。レッカはその男を見るなり厨房に戻っていた。そして商品を取ってきた。

    「お待たせしました!最弱品種を日当たりの悪い場所で育て、さらに発育不良米を選りすぐった弱すぎる米で作ったサラッサラの貧弱おかゆだぜ!おかゆというよりもうポタージュだぜ!!!」

    「…貰おう」

    おかゆを受け取った黒野は、灰島の社員証を見せ、割引で購入していった。

    「なんだアイツは……」

    「注文の電話があったのを忘れていたぜ……」

    パティスリーフレイムの客層は幅広い。カリムが残り少ないショーケースを確認していると、

    「あのー……ボリュームがすごいいつものはどれですか?」

    と話しかけられた。

    顔を上げると、帽子を目深に被ったボウス頭の野球部であろう学生だった。

    「あ~、レッカ案のだな。今日は何種類も入れているからいつもより量とボリュームがある」

    「ありがとうございます!二つください!」

    カリムがおまけのクッキーも袋に入れ、会計をすると、野球部員が話しかけてきた。

    「俺…卒業したらカリムさんみたいになりたいっす。髪も伸ばして……タトゥーの店おしえてくださいね…」

    野球部員は照れながらも真剣なまなざしでカリムを見つめている。それを聞いていたレッカが横から少年の方を掴み、

    「カリムにあこがれる少年か!俺が教えてやるぜ☆カリムになりたいなら、見た目じゃなくて!まずは!友達を大事にするんだな☆☆カリムはいっつもダルそうだけど、実は俺たちのことが大大大好きなんだぜ☆」

    「やめろレッカ!!」

    野球部の少年は日焼けした顔で白い歯を見せ笑い、帽子を取って挨拶して駆けていった。

    「ふむ…カリムは守備範囲が広いのですね」

    「野球じゃねェんだぞ……」

    フォイェンは笑いながら店の外へ出た。そして「本日売り切れ☆」と書かれた紙を貼った。貼り紙にはでかでかとおにぎりの絵が描かれている。

    3人は街の人々のためにおにぎりを握り活力を与えている。そう、パティスリーとは名ばかりの、ここは人気のおにぎり屋だ。店名変更は許可されていない。


    「今日も全部売れたぜ☆トレーニングもできるしゆっくり朝食も食べられる。やっぱりおにぎり屋にして正解だぜ!!」

    ケーキをブランチとして食べながら、三人はああだこうだと話している。

    「そうですね。これが私たちにはベストなのかもしれないね。……ケーキも良い仕上がりですね。レッカ、抹茶と小豆の組み合わせ、意外に合いますね!……さてこれを食べたらオニャンゴさんのところへ配達に行ってきますね。ついでにホームセンターで花の苗を買ってきます」

    「なんだかんだ皆この生活を気に入っているな……俺も昼寝したら第四の訓練校に配達してトランペットの練習のレッスンに行ってくる」

    「カリム!長く昼寝しちゃだめだぜ!夜9時に眠れなくなるぜ☆」

    「……わかった了解…」

    パティスリーフレイムの朝は早い。




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