ブラネロ妖異譚パロ進捗 卵に葉物と、ブラッドリーにはとんと食指の動かない献立だと思っていた。そんな話を向けると、不敵な笑みを浮かべてくる。
「あのちっちゃい狐たちには評判良かったんだろ。目先を変えた新料理で、新しい客が増えるならいいもんだよな。あの狐の兄ちゃんの瓦版もちっちゃいやつらに人気だし、話が広がれば儲けもんだぜ」
どこまでも目端が利く男なのだった。と、言い終えたところで「まあ、俺には物足りねえけどな。肉でも入ってりゃあよ」と付け足してくる。
いつもなら、またか、と思うだけのやりとりである。だがこの提案はネロの発想にも響いた。「――肉か」と呟き、思案を巡らす。
店の看板料理でもある鶏肉を使って、卵で綴じる。悪くないかもしれない。鶏肉の持つ旨味とふわふわとまろやかな卵の相性は良さそうである。揚げた鶏が胃の腑に重いと感じる客にも、違った嗜好を示せるかもしれない。
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