たとえばこんな秋の夜楽しかったね。傍らの教授はいつにも増して上機嫌だった。
「まあ、なかなか良いものになったのでは?」
「……レオス君、そういう言い方しないの」
「一応心配していたんですよ、いつもと違って案件でしたし」
何事も全力――なのは大変に良いのだが、やや暴走気味になっていないかと言われたら否定できない。
自分たちだけが楽しんだら意味がないのでは、と考えては、いた。いちおう。
「始まるまででしょ、それ」
「予行練習とはいえオリバー君に負けるとは思いませんでねえ」
そりゃあ、僕だって負けたくなかったもの。ちゃんと予習もしたし。
「そのおかげでまあ、見てて楽しいものになったんじゃないかな」
「頂けるのなら土地も欲しいですけど」
「ワガママ言わないの。僕だっていただけるなら欲しいけど」
もう一回機会をもらえるのなら、そのほうが楽しそうだし。
「違いないですねぇ」
次は残り三人の善戦に期待しましょう。笑ってみせると、相手もそうだね、と頷いた。
鼻歌混じりの博士は、いつになく上機嫌だった。
「楽しかったね」
返事はとくになかったが、こっちを見た博士の目は笑っていた。
「酔っているんですか? あなたさっきからそればっかりじゃないですか」
「だって楽しかったんだもの」
五人でやると、いつも予想してなかったほうに転がるけど、でも結局最高に面白くなるからいいよね。
「……それは否定しませんが。ああでも、オリバー君に負けたのは納得いきませんねえ」
「博士一回勝ったじゃん」
「そうですよ、でも」
予行練習から一勝一敗で、三戦目で勝ち逃げるつもりだったのに。
「オリバー君が残るのは予想してたんですけどねえ」
「まあ、勝負は時の運だから」
小さく笑い、楽しかったねと繰り返す。最後の競り合いは熱くなってしまった自覚はあるが――
「レオス君といい勝負ができて嬉しかったな」
「………」
私もですよ。そんな言葉が聞こえた気がして、じっと彼を見てみた。
こっちを見た目が、ふい、とそらされる。
「あんなふうに、真正面きって挑んでこられるのは、何年ぶりだか」