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    dps94kakuriyo

    @dps94kakuriyo

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    クラノス、サテヨモ、フククワのネタ帳からSS化したものをここにあげたり、文庫の作業場だったり。他にもいろいろ。

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    サテヨモ。実は道端で◯んでる犬を見て凹んでるヨモ。塵から復活させるより、純然な死からの復活の方が難しいって言う。

    #サテヨモ
    iwomo

    通り雨『今どこに居る』
     唐突なメッセージはいつものことだったけれど、どうにも気になって数分遅れの返信を打った。
    『ギルドに居ます』
     数分後、またメッセージが来る。
    『来い』
     何となく違和感がある。根拠は無いけど、俺の勘はこういう時何故かよく当たるんだ。
    「おや、雨が降ってきたねぇ」
    「マジかよ。傘持ってきてねぇぞ」
     時間的にも、今夜はこの辺りで撤収になりそうだ。
    『仕事終わりそうなんで、今から行きます』
     そう返信してから、ロナルドに傘を貸してギルドを出た。だってドラさんがスナッて雨に流れたら大変だし。

     通話を押したけど出てもらえない。自然と早歩きになって、気がつけば歩道を走っていた。雨が強くなってきたけどそんなのどうでもいい。早く行かないと。
    「遅くにすみません! 所長さんに用が合って」
    「ずぶ濡れじゃないですか! とりあえずこれ使って」
     夜間の守衛さんにタオルを貰った。後日洗って返すと伝えてVRCの中に入る。頭と体を適当に拭きながらラボを目指した。
     ラボの扉は生体認証で開く。中からロックはされてないようでホッとした矢先、開いた扉の真前に、ヨモツザカさんが立っていた。
    「えっ、あ」
     狼狽えているうちに腕を引かれて、あっという間に抱きつかれた。
    「よ、ヨモツザカさん?」
     俺、雨でびっしょりなのに……この人まで濡れてしまう。
    「あの……」
    「……」
     今、どんな顔をしてるんだろう?
     でも、やっぱり来てよかった。理由は後で話したい時に話してもらうとして、まずは着替えだ。
    「すいません。検査着借りていいですか? ほら、俺、びしょ濡れで……」
    「……」
     検査着は仮眠室にある。結局、ヨモツザカさんを体の前に担いで移動した。でも、よく考えたらこんな状態で着替えるのは無理じゃないか?
    「えっと、ちょっと待っててください」
     仮眠ベットに転がして(後ろ髪を引かれたけど腕は強引に外した)、さっさと検査着に着替える。ああ、ヨモツザカさんがそっぽを向いてしまった。これは拗ねてるかも。
    「……すいません」
    「……」
     検査着に着替えて、ようやく好きに抱きしめることができる。拗ねたヨモツザカさんの背後から腕を回して、懐に引き寄せた。
    「……話したいことがあったらいつでも聞きます」
     彼の薄青色の髪に顔を埋める。俺のせいで少し湿ってる。
    「他にしたいことがあれば、できる限りします」
     付き合ってるならセックスだって尚更だ。でも、それでこの人の心が癒せればの話であって、俺の欲求は正直二の次でいい。今日がダメならその次がある。
    「今日は、一緒に寝てください」
     仮眠ベッドの掛布を足で引っ掛けて手繰り寄せる。やっぱり、今日は寝てしまうのが正解だ。抵抗もないし、こうして抱き寄せていれば多分落ち着いてくれる。ただでさえ徹夜がデフォルトの職場だし、この状況に託けて睡眠をとってもらうのも手だ。悪い夢を見ようものなら、俺が追い払ってやる。
     ……そう意気込んでいた割に、長距離を走った疲れだったのか、いつのまにか俺はストンと眠りに落ちてしまった。

     目が覚めると、ベッドの上からヨモツザカさんの姿は消えていた。シーツが冷たいから、離れて大分経ってるかもしれない。
     乾いていた服に着替えて、無人のラボを出る。すると、ちょうどタイミングよくカズラさんに出会した。
    「あ! お、おはようございます……」
    「あら、おはようございます」
     カズラさんは一瞬何か言いかけたあと、やんわりと口を閉ざした。
    「あの、何かありました?」
    「…………朝から出動要請があって、所長は一時間ほど前にここを出たの。服が乾いたら勝手に帰れって、伝言を伝えにきたのだけど」
    「あはは! わかりました。了解です」
     そこまで言えるなら、昨日よりかは随分マシだ。
     カズラさんに別れを告げて、雨上がりのVRCを後にする。徐にRINEを開けば、ヨモツザカさんからメッセージが届いていた。
    『今夜車で迎えに来い』
    「……ははっ」
    『わかりました』
     反射的に、定型文みたいな返信を打った。

     理由が気にならないなんて嘘になるけど、俺は『待て』ができる従順な犬だから気長に待つことにする。もしかしたら今夜、何か聞かせてくれるかもしれない。
     ……なんて、どこが気長なんだか。思わず自嘲してしまって、守衛さんに変な目で見られてしまった。

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