私のせい しゅんしゅんと音を立てて沸いたケトルの湯を静かにドリッパーに落とす。黒い山が湯にあたり静かにくずれると湯気を立てながら静かに蒸らされていく。ここでお湯を落とさず数十秒。しっかり蒸らし香りが立ち始めたところでさらに焦らず、ゆっくりと湯を落としていくのだが、この時間と根気のいる作業が藍曦臣は好きだった。
珈琲を淹れる事にはまったのはつい最近、自宅でも美味しく珈琲を淹れられると聞いて道具を揃えた。
道具を揃えるのもガラス製、ステンレス製、ペーパーフィルターの形状など凝りだしたらきりがなく、試しに形状別、製品別に一通り揃えて試そうとしたのを止められたのは記憶に新しい出来事だ。
珈琲の淹れ方について指南してくれた先生は曦臣の淹れた初めての一杯を「まぁまぁだな」と評し、それ以上は言葉を重ねなかったがその次もそのまた次もカップを空にしてくれたので悪くはないのだと思う。
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