春抱く墓標夢を見ていた。
「愛しているよ、オベロン」
夢を繰り返して、何度となくそんな嘘をついた。見破られるための、見捨てられるための嘘。けれど彼はいつだって、その何でも見通せる瞳で私を見据えるだけだった。だから私が今いちばん憶えているのは、オベロンの瞳だ。
「だから早く殺してね。それか死んでよ。死ね、しね、死んで」
廃銀の髪色より、病跡の白皙より、異形の薄羽より、ただのふたつの眼。
そうしてこれよりピリオドを打ちますのは、脳が見せるおしまいの幻覚。つまりは走馬燈。せっかくのオーダーメイドひとり芝居なんだから、派手にぶち上げていきましょう!
オベロンは笑った。
「いいよ。それがきみの望みなら」
これはあなたの、世界の終わりのお話だ。
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