【若トマ】タイトル未定の長編予定④ 微かな風が頬を撫ぜるのに、目を覚ます。
うっそり重い目蓋を開けば、脳がまだ少し酩酊を訴えていた。
どうやら、故郷の酒であろうと例外なく寝落ちてしまったらしい。
部屋まで運んでくれたんだろうか。
硬い机の感触はおろか、トーマの全身を包む感触は畳よりも柔く優しい。
手を、煩わせてしまったな。次からは、気を付けないと。なんて、まだ鈍い頭を緩慢にまわしたところで、ふとすぐ近くに声が落ちた。
「おや、目が覚めてしまったかい?」
問われ、声のした方へとおもむろに視線をあげる。
伸ばした首が僅かな息苦しさを生んだけれど、それ以上に眼前に広がる光景がトーマの呼吸を奪った。
吐息の絡む。その距離に、綾人がいる。
障子窓が珍しく開け放たれているのか。
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