【夏五】残照(途中) 頭の中で、知らない歌が流れる。
知らないはずなのに、どこか懐かしいメロディ。思わず口ずさんでしまう、そんな曲。
歌詞は曖昧で、途中でメロディだけになって、よく笑われた。
流行りの曲は、全部アイツが教えてくれた。
―――アイツって誰だろう。
首を傾げる。物心ついたときから、そんなことを教えてくれる友だちなんてひとりもいなかったのに。
”記憶力”はいい方だ。
けれど、ずっと頭の中に棲みついているソイツの、名前も顔も思い出せないのだ。
「いたか!」
「いえ、こっちには…」
「クソ、あのガキどこ行きやがった!」
「ま、まずいですよ、早く見つけないと、俺たちがこ、殺される」
「んなこたァわかってんだよ!そっち探せ!絶対に探し出せ!」
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